デロイトが分析、なぜ大和ハウス工業が“建設DX”の先頭にいるのか? 守りから攻めのDXへ大手ゼネコンの建設DX戦略(3/3 ページ)

» 2025年02月18日 12時26分 公開
[宮裡將揮BUILT]
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“守りのDX”から“攻めのDX”の段階へ

大和ハウス工業 上席執行役員 技術統括本部 副本部長 建設DX推進統括担当 河野宏氏 大和ハウス工業 上席執行役員 技術統括本部 副本部長 建設DX推進統括担当 河野宏氏

 大和ハウス工業 上席執行役員 技術統括本部 副本部長 建設DX推進統括担当 河野宏氏は、DX施策の現況を報告した。

 DXの取り組みは当初、2017年に「BIM推進室」が発足したことを皮切りに、BIM活用を中心にスタート。現在は「建設DX推進部」と名を変え、コンストラクション部門と、BIM部門に分業して全社のデジタル変革に挑んでいる。

 施策としては建設プラットフォームを軸に据え、積極的にBIMなどのデータの活用と蓄積の両輪で取り組んできた。河野氏は「現在はデータを貯めるフェーズが進み、攻めの収益モデルの構築へと入った」とする。

大和ハウス工業のDX施策 大和ハウス工業のDX施策

 大和ハウス工業は、建設DXを設計BIMからスタートし、施工、製造へと適用を順次拡大してデータベースに蓄積してきた。貯まったBIMデータをICT施工や遠隔管理へと生かし、さらに再度設計へとフィードバックしていく「デジタルループ」の構造を思い描く。「当社はプレハブメーカーとして、建築の工業化に取り組んできたが、BIMで改めて次世代の工業化を目指したい」と河野氏は語る。

 設計段階では現在、BIMを用いて仕様セレクトツールやプレゼンゲートウェイ、標準詳細図一括抽出、一貫構造計算ソフト連携など多様なツールの導入が進み、「活用に濃淡はあるが、先行開発してきたものは80〜90%程度導入している」(河野氏)。

 施工分野では、戸建て住宅や集合住宅の施工現場ではペーパーレスに向けた物件ポータルサイトの活用が80%を超え、時間短縮に向けたダッシュボード活用や工事写真アプリ、施工管理支援アプリなどが普及している。

 定着の効果も出てきており、遠隔での映像を用いた施工管理は、戸建て住宅の約4200現場で92%が利用。IoT機器の利用率は、集合住宅の約2400となる施工現場の全てで活用されるなど、目に見えてデジタル化の定着が進んでいる。

これまでの施工DXの定着効果 これまでの施工DXの定着効果

 今後の展開については、営業担当者が建物の原価を共通データベースに蓄積した情報からすぐに引き出せるシステムの整備に着手。同時に建設プラットフォームで蓄積したデータを川上から川下へと波及させていく仕組みも強化する。河野氏は「創業から続く『早く、良く、安く』の理念を大切にし、顧客にとって価値ある提案を目指したい。今まで蓄積したデータを活用していく時期に入ってきた」と意気込む。

川上から川下までのさまざまなDX施策を展開し、建設プロセス全体のデジタル変革を目指す 川上から川下までのさまざまなDX施策を展開し、建設プロセス全体のデジタル変革を目指す
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