こうした類型を踏まえると、建設業界では設計のデジタル化を皮切りにバリューチェーン全体での業務プロセス全体のDXに取り組んでいるものの、規格化が難しい一品受注生産が主流で、外部協力会社との連携も必要などが課題となっている。
しかし、大和ハウス工業は、顧客課題解決型と工業化生産型の両面を持つ企業で、庄崎氏は「先ほどのDX施策と適合した事業形態だ」と紹介する。
デロイトトーマツコンサルティング シニアマネジャー 小笠原峻志氏は大和ハウス工業の強みについて、不動産の企画開発を担う川上領域と設計・生産・施工を担う川中領域、不動産の維持管理・運用を担う川下領域の全てを併せ持つ、“ゼネコンとデベロッパーの要素を兼ね備える”企業で珍しい事業形態と分析する。
大和ハウス工業は、こうしたそれぞれの領域をデジタル技術で統合し、ビジネスモデルをさらに加速させている。具体的には企画・設計、営業、調達、製造、施工、工程計画、維持管理の各段階の業務プロセスをデジタルでつなげ、情報連携による顧客価値の転換や生産性向上を図っている。
このうち顧客価値の見直しは、例えば企画・設計と工程計画のデータ連携で、設計時にリアルタイムで工事にかかる期間をシミュレーションし、顧客が求める仕様と工期のバランスを図るなどがある。他にも、営業部門と設計や維持管理のデータを共有し、建物の運用状況や劣化の進行度を予測して事業計画に織り込むなども想定している。
生産性向上の取り組みでは、「BIMを活用した設計情報のデジタル化」を挙げる。デジタル化した設計情報の数量と資材の単価情報を合わせ、積算や見積もりをスムーズにするとともに、工程情報のデータも統合することで現場のプロジェクトマネジメント刷新を図る。
小笠原氏は「大和ハウス工業は住宅事業を中心に、規格化や工業化を追求する風土が根強い。建設DXでプロセス全体を革新するプレイヤーに成り得る」と語る。
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