デロイトが分析、なぜ大和ハウス工業が“建設DX”の先頭にいるのか? 守りから攻めのDXへ大手ゼネコンの建設DX戦略(1/3 ページ)

大手の建設業各社は、設計段階のBIM活用を皮切りに、建設生産プロセス全体でデジタル変革を目指しているが、一品受注生産などが理由となって柔軟に対応できている企業は多くはない。そうした中でDXの波にいち早く乗った大和ハウス工業は、“守りと攻め”のDX戦略を展開し、設計、製造、施工、維持管理をデータドリブンで連携するなど、他社に先駆け、デジタル変革が実現しつつある。

» 2025年02月18日 12時26分 公開
[宮裡將揮BUILT]

 大和ハウス工業は2024年12月9日、「業界動向勉強会<建設DX(2024年)篇>」を開催した。日々進化する「建設DX」をテーマに取り上げ、デロイトトーマツコンサルティングも招へいし、建設業界全体でのDX浸透度合いと、大和ハウス工業の「第7次中期経営計画」に基づくDX進捗などを深掘りした。

これまでに経験のない労働者不足クライシスが到来

 建設業界の国内需要は、ここ数年一貫して伸び続けている。2015年度の建設投資56.6兆円から、2024年度には73兆円規模となり、近年は公共事業の増加などを背景に業績は伸び続けている(※国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」)。今後も都心再開発や半導体工場といったサプライチェーンの国内回帰を受け、成長ベースでみると2030年には76.8兆円、2035年には77.4兆円規模にまで拡大すると見込まれている。

 ただ、供給の観点からは労働力不足などの山積する問題が表面化してきている。国内の生産年齢人口は、2000年から一貫して減少傾向にある。しかし就業者数自体は増加しており、現在までは女性や高齢者の労働参加が全体の就業者数を下支えしている格好だが、労働参加率が世界的にも高い80%の水準で、さらなる上昇は困難とされている。

 デロイトトーマツコンサルティング 執行役員 パートナー 庄崎政則氏(※崎はたつさき)は「現況でも労働者不足が指摘されているが、むしろ就業者数は増加していた。言い換えるなら、これからが人手不足の本番となり、これまで経験したことのない労働者不足に陥ることとなる」と指摘する。

就業者数の減少はこれから深刻化すると予測 就業者数の減少はこれから深刻化すると予測

 建設資材価格の高騰も続く。2020年頃から急上昇し、2024年は2015年比で140%の水準にある。今後も労働需給の不均衡が継続するため、原価は上がり続けていくのは想像に難くない。リニューアル工事の比率が徐々に上がり、中長期的な需要は望めるが、インフレ長期化が予想される中で、抜本的な対応が建設会社には求められている。

 庄崎氏は「少ない人手で、企画、設計、施工ができる生産性向上の仕組みづくりと、顧客の提供価値を見直しし、DXを手段として自社の強みにどう生かしていくかを考える局面に来ている」と分析する。

 そのために庄崎氏は、建設業界で活躍する各企業を4つの類型で示した。顧客要望を叶(かな)える類型としてスーパーゼネコンらが当てはまる総合建設業の「受注生産型」と、顧客の事業目的を理解して川上の不動産から川下の事業面まで事業を展開していく「顧客課題解決型」の2種類。

 自社商品に強みを持つ類型では、ハウスメーカーなどが相当する「工業化生産型」と、自分たちが売るべき商品や作り方を自社で決める「パッケージ型」。

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