東急建設、鴻池組、大林組、西松建設の建設DXで陣頭指揮を執る4人の担当者が、MCデータプラス主催の「建設DXカンファレンス2024」で、「DXを推進した先で何を“成果=ゴール”と考えるか?」をテーマに、経営目線でDX戦略の方向性や現状の課題について熱論を交わした。
MCデータプラスは2024年3月1日、東京都港の品川インターシティホールでプライベートイベント「建設DXカンファレンス2024」を開催した。本稿ででは、大手ゼネコン4社のDX推進担当者による経営者目線で建設DXの本質に迫ったパネルディスカッションをレポートする。
登壇者は、西松建設 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏、大林組 常務執行役員 DX本部長 岡野英一郎氏、鴻池組 デジタル戦略室 デジタル戦略部長 橋本諭氏、東急建設 建築事業本部 事業統括部 建築企画部 ICTグループ グループリーダー 小松準二氏で、モデレータは大手ゼネコンの出身で現在は大学で講師を務める松田太一氏が担当した(順不同)。
ディスカッション前に西松建設の坪井氏は、建設産業での喫緊の課題として、人手不足解消と労働生産性の改善を挙げ、是正のためにはデジタル技術とデータ利活用で既存の事業を変革するDXが重要とした。
ただ前提として、建設産業には他産業と異なる特性がある。例えば、建設産業は一品受注生産で、作業を現地の屋外で行う労働集約型のスタイルをとる。また、重層の下請構造で、元請け主導のDX導入が協力会社への“しわ寄せ”増加を招く懸念がある。
建設業で重視されるのは現場業務の効率化で、西松建設でも注力している領域だ。しかし、坪井氏は、「それだけで良いのかとも正直悩んでいる」とし、今回のディスカションでは、「DXをどう捉えているか?」「DXで何を実現したいか」の設問を設定し、各社の意見を聞きたいと語った。
坪井氏は2年弱前まで、現場に出ていた経験から、DXをどう捉えているか?については、図面や書類のペーパーレス化、BIM/CIM、施工管理ソリューション、ICT建機、遠隔操作などを“建設テック”と認識している。ただ建設テックは、組織や個人のアナログ業務をデジタル化する「Digitization(デジタイゼーション)」と、複数のデジタル技術を組み合わせて業務全体のフローを最適化/自動化する「Digitalization(デジタライゼーション)」の範囲にとどまり、現時点では本当の意味でのDXに至っていないとの考えを示した。
坪井氏によれば、「DXは社会環境の変化や急速なデジタル技術革新に合わせ、産業構造そのものを変えることではないか」と語る。ゼネコンの中には既にチャレンジしている企業もあるが、多くの建設会社ではイメージをつかみにくいのが現状のようだ。その上で、これからの社会で重要となるキーワードを坪井氏は、「持続可能性」「Well-Being(ウェルビーイング)」「多様性」の3つとし、こうしたキーワードで建設産業が果たすべき役割は大きく、デジタルの力を使って変革を続ける“DXジャーニー”に向け、企業の経営層が覚悟を持って舵を切れるか否かが重要とした。
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