新たな芽をいつか森に、清水建設がイノベーション拠点でゼネコンの枠を超えて目指す姿温故創新の森「NOVARE」探訪(前編)(1/5 ページ)

スマートイノベーションカンパニーを目指し建設を超えた領域でのイノベーションを推進する清水建設。イノベーション創出のための重要拠点として新たに2023年9月に設立したのが「温故創新の森『NOVARE』」だ。本稿では、前編でNOVAREの全体像を紹介し、後編ではDXによる新たな空間創出への取り組みを紹介する。

» 2024年05月27日 07時00分 公開
[三島一孝BUILT]

 清水建設グループは2030年に目指す姿として、建設事業の枠を超え、時代を先取りする価値を創造するスマートイノベーションカンパニーへの進化を目指している。そのために、重要になるのが、事業構造、技術、人財についての3つのイノベーションだ。この3つのイノベーションを実現するための拠点として2023年9月に東京都江東区潮見で設立したのが「温故創新の森『NOVARE(ノヴァーレ)』」である。

 本稿では、前編でこのNOVAREの概要を紹介し、後編ではイノベーションにおける要素の1つとして積極的な取り組みを進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用事例を紹介する。

イノベーション活動を支える温故創新の森「NOVARE」

 温故創新の森「NOVARE」は、モノづくりの原点に立ち返りつつ進取の精神を育成するというコンセプトで名付けられた。「温故創新」は、故事の温故知新を基に、より新たなものを創出する意図を込めており、さらに「森」はこれらを単独で行うのではなく、エコシステムとして複数の技術や部門、企業、また施設が連携しながら実現していくことを示している。英語では「Smart Innovation Ecosystem」として紹介されている。ちなみに、NOVAREは、イノベーションの語源となるラテン語の「INNOVARE」の一部を由来としており、オープンな枠組みの中で新たな価値創出を進めていく姿勢を示している。

 NOVAREは主に5つの施設で構成されている。オープンイノベーション施設となっている「NOVARE Hub」、技術研究拠点としての役割を担う「NOVARE Lab」、教育施設としての役割を担う「NOVARE Academy」、歴史資料館である「NOVARE Archives」、歴史的建造物である旧渋沢栄一邸を移設した「旧渋沢邸」だ。

NOVAREの各施設の様子 NOVAREの各施設の様子 出典:清水建設資料
清水建設 NOVAREプランニングオフィス プロモーションユニット グループコンダクターの鳥越一平氏 清水建設 NOVAREプランニングオフィス プロモーションユニット グループコンダクターの鳥越一平氏

 イノベーションを真に推進するためには、施設だけでなく組織としてこれらを生かしていくことが必要だが、清水建設ではNOVAREのオープンと同時に、専属で運営する組織を用意している。組織は、全員参加型のイノベーションを活性化する役割を担い、イノベーション活動を統合的にサポートしていく。

 NOVAREの活用をさまざまな形で推進している、清水建設 NOVAREプランニングオフィス プロモーションユニット グループコンダクターの鳥越一平氏は「運営組織としてもイノベーションを総合的に推進する役割で、社内外の人々と接しながら、社内でもさまざまな組織を巻き込んで、オープンイノベーションを進めていけるようにしている」と役割について述べている。

NOVARE内で使用されている技術群 NOVARE内で使用されている技術群 出典:清水建設資料
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