AIの需要予測で街区全体の熱を融通、清水建設がイノベーション拠点に導入AI

清水建設は、街区内の各棟に分散配置した熱源群を1つの熱源システムとして統合制御することで、搬送動力も含めエネルギー利用を最適化する街区熱融通システムを開発した。

» 2024年04月15日 11時00分 公開
[BUILT]

 清水建設は2024年3月28日、複数の建物間で冷水や温水などの熱媒を融通し合い、街区全体でエネルギーを有効利用するシステム「ネツノワ」を開発したと発表した。既に東京都江東区の自社イノベーション拠点「温故創新の森NOVARE(ノヴァ―レ)」に導入し、用途が異なる4棟間の熱融通モデルを構築した。各棟に分散配置した、電気/ガス熱源、水蓄熱槽、ガス/水素コージェネレーションシステム、太陽熱利用システム、地中熱利用システムなどを統合制御することで、エネルギー消費量とCO2排出量の削減を目指す。

「温故創新の森NOVARE」の街区熱融通システム 「温故創新の森NOVARE」の街区熱融通システム 出典:清水建設プレスリリース

AI機能搭載のCEMSを導入し、街区全体の運転効率を最大化

 ネツノワは、街区内の建物群に分散配置した熱源機器を熱融通配管で連携するとともに、AIを搭載したCEMS(Community Energy Management System)により各棟の熱需要を高精度に予測することで、街区全体の運転効率を最大化する。

 CEMSに搭載したAIは、過去のエネルギー利用実績や気象予報、建物の利用状況の他、建物内の人の位置情報なども加味して熱負荷を予測する。日中など熱負荷の高い時間帯には建物の自己熱源を優先運転して搬送効率を最適化。夜間や土日などの低負荷時には熱源の運転台数を減らし、効率の高い熱源機器に製造を集約することで効率化を図る。

 ネツノワの熱源システムは、電気とガスを併用する高効率熱源機、太陽熱や地中熱を利用する再生可能エネルギーシステム、発電時の排熱を熱エネルギーとして利用するコージェネレーションシステムなどを組み合わせることで、エネルギー効率を高める。また、熱負荷特性の異なる建物が熱源システムを共用することで、各建物の設備容量を低減でき、イニシャルコストや設備スペ―スの削減につながる。

 清水建設の試算によると、熱源の3割に再生可能エネルギーと未利用エネルギーを導入したネツノワのモデルケースでは、熱源消費エネルギーと熱搬送消費エネルギーの削減効果は約20%になるという。

「ネツノワ」のシステム構成イメージ 「ネツノワ」のシステム構成イメージ 出典:清水建設プレスリリース

 清水建設は今後、NOVAREを、複数施設をネットワーク化して都市全体でゼロ/エネルギーの実現を目指す「ネット/ゼロ/エネルギー/ソサエティ(ZES)」に関する要素技術の実証や、社外のパートナーとの技術共創の場として活用していく。

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