清水建設は、大分県玖珠郡九重町で完成した低コスト・グリーン水素製造技術実証プラントの実証運転を2022年8月に開始した。実証運転に先立ち、関係者約30人を招き、2022年7月28日に現地で実証開始式を行った。
清水建設は、大分県玖珠郡九重町で完成した低コスト・グリーン水素製造技術実証プラントの実証運転を2022年8月に開始した。
今回の実証プラントは、環境省が推進している「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の対象になっており、清水建設が環境省から事業の委託を受けて建設された。プラントで使用される低コスト・グリーン水素製造技術は、清水建設、市川事務所、エネサイクル、大日機械工業、ハイドロネクストの5社が共同開発した。
この技術を適用したプラントは、木質チップの炭化炉、炭化物をガス化する改質反応器、水素精製装置から構成される。水素の製造プロセスは、まず炭化炉に投入した木材チップを蒸し焼き状態にして炭化物(C)を生成する。
次に炭化物を改質ガス化炉に投入して水蒸気を追加し、炉の中を800度超えの高温にすることで炭化物と水蒸気を化学反応させ、改質ガスと呼称されるH2、CO、CO2、水蒸気を含む混合ガスを生成。この改質ガスを再び高温で化学反応させてH2の含有量を高めた後、PSAガス精製装置と金属膜水素分離装置で燃料電池用グリーン水素(純度99.999%以上)を抽出・製造する。
加えて、水素製造の過程で生成される1070度の高温ガスを熱源とし電力使用量を抑えることで、余剰となる高温排熱(ガス)を地熱発電用水蒸気の追い炊き熱源として売熱し、水素製造コストを大幅に減らす。なお、高温ガスは、炭化炉で副生する燃料ガスやタールを空気燃焼させることで生成される。
プラントの実証運転では、低コスト・グリーン水素製造技術や国内に豊富に存在する地熱と木材などのバイオマス資源を用いて、製造時のCO2排出量を市販水素の10分の1以下とするだけでなく、太陽光などの再生可能エネルギーを活用し、水電解水素の製造コストを3分の1にする。
具体的には、2022年8月から12月にかけて、約25日間の連続運転を3回行う。連続運転では、バイオマス資源としてスギのチップ材と地熱水の蒸気を利用して水素を発生させる。水素製造能力は毎時50ノルマルリューベとし、水素の純度が99.999%以上であることも確かめる。
さらに、品質と安全性を踏まえ、プラントが安定的に稼働できることを検証するとともに、生産効率から推定される水素の製造コストとCO2排出削減率などを算定してレポートにまとめ、2023年の3月中に環境省に提出する。
今後は、実証事業を通じて得られるノウハウを活用し、中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントの独自開発に取り組む予定だ。中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントの水素製造能力は毎時250〜1000ノルマルリューベを想定している。
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