鹿島建設は、山岳トンネル工事で吹付けコンクリートの自動化を初めて、岐阜県飛騨市で進めるトンネル工事に適用した。
鹿島建設は2023年1月12日、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」のうち、「自動吹付けシステム」をトンネルの複雑な凹凸を有する岩盤面に適用した。吹付け作業は、確実な吹付け厚さの確保や仕上がりの平滑性が求められ、その技量により作業時間や品質に大きな差が生じるが、支保工間の吹付け仕上がり面に対して±20ミリという高精度で平滑にコンクリートを自動で吹付ける技術が実証された。
次世代の山岳トンネル自動化施工システムA4CSEL for Tunnelは、山岳トンネル工事の掘削作業における6つの施工ステップとして、1.穿孔、2.装薬・発破、3.ずり出し、4.アタリ取り、5.吹付け、6.ロックボルト打設の各重機を自動化/遠隔化し、現場環境に適合した作業計画をリアルタイムで生成して、最も効率的な作業のアルゴリズムを構築する。6つの工程のなかで、5.の吹付け作業については、2021年6月に静岡県の模擬トンネルで、吹付け厚を設定し、その計画通りに平滑に仕上げることができる自動吹付けシステムを開発した。
しかし、実際の岩盤には複雑な凹凸を有する吹付け対象面が存在する。そのため、模擬トンネルでは再現できなかった凹凸のある地山で仕上がり精度を確保する技術の実証が必要となっていた。
模擬トンネルでの実験では、吹付けコンクリートの最小限の跳ね返りかつ平滑な仕上げ面で目的の吹付け厚さを吹く基本的なノズルワーク(吹付け面に対するノズルの離隔距離やノズル角度など)を構築した。
一方、地山の複雑な凹凸を有する岩盤吹付け面で重要となるのが、吹付け前のスキャニングによる形状測定の結果から、平滑な仕上がり面を確保するための最適な吹付けパターンを決定する吹付け計画と、機械が計画通りに作業を行うための制御プログラムだ。
スキャニングから自動吹付け開始までの具体的な流れは、付け前に吹付け対象範囲をスキャンし、凹凸面を計測する。その後、平滑な仕上がり面を確保するため、凹凸段差部の大きさに合わせて吹付け範囲をゾーニングし、吹付け計画を作成。作成した計画を自動吹付け機の制御プログラムにインプットして、自動吹付けを開始するまでが一連の工程となる。
吹付け計画では、対象面の形状を基に吹付け作業を最適な小ブロックに分割して、ブロックごとに吹付けノズルの移動速度、ノズル角度、吹付け回数が設定されます。それら吹付け計画を機械的に制御できるプログラムを付加することで、施工中のトンネルにおいても精度の高い自動吹付けを可能としました。
適用対象となった岐阜県飛騨市神岡町の神岡試験坑道工事は、トンネル掘削は321.3メートル、掘削断面積はアプローチ部43.9平方メートルで、自動化施工試験部は73.5平方メートル。実トンネルにでの適用結果としては、凹凸のある地山形状に自動吹付けを行い、支保工間の吹付け仕上がり面が、標準偏差±20ミリで吹付けできていることを確認した。
今後、鹿島建設では吹付けコンクリートが付着しづらい脆弱(ぜいじゃく)な部位や局所的な湧水が発生している部位など、特殊な地山条件への対応に加え、実工事に向けた吹付け方法のブラッシュアップを図っていく。
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