三井住友信託銀行は都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の賃貸オフィスビルの環境認証の取得状況と経済価値に関する調査を行い、環境認証の最高ランクを取得した延べ床面積1万坪以上のビルで、賃料を引き上げる効果が確認されたと報告した。
三井住友信託銀行は2024年7月8日、三井住友トラスト基礎研究所と共同で、東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)を対象に、賃貸オフィスビルの環境認証の取得状況と経済価値に関する調査の結果を発表した。
調査の結果、2023年度末時点で、東京都心5区の賃貸オフィスビルの過半数(延べ床面積ベース)で環境認証を取得していることが明らかになった他、環境認証の最高ランクを取得した延べ床面積1万坪以上のビルでは賃料引き上げ効果が確認された。
調査ではCASBEE(建築、不動産)、DBJ Green Building認証、BELSのデータをもとに分析を行った。各環境認証制度を評価5〜1に分類して比較している。
調査によると、東京都心5区の賃貸オフィスビルでの環境認証の取得は、棟数ベースでは1932棟のうち542棟と全体の28%(2022年度比5ポイント増)にとどまったが、延べ床面積ベースでは1259万坪のうち681万坪と全体の54%(同度比13ポイント増)となり、調査を開始してから初めて半数を超えた。環境認証を取得しているビルでは評価4以上を取得している物件が約9割に達していた。
また、1981年以降に竣工した延べ床面積1000坪以上のビルについて、環境認証の取得状況や評価結果が新規成約込み賃料に与える効果の大きさを定量的に推計した。
延べ床面積1万坪未満のグループでは環境認証の取得による影響は見られなかったものの、1万坪以上のグループでは、賃料を押し上げる効果が確認された。
1万坪以上のグループのうち、1999年以前に竣工した物件では、評価4と3のビルで統計的な有意差は見られなかったが、評価5のビルは4のビルと比較して2.9%の賃料の押し上げ効果が確認された。また、2000年以降の築浅ビルに絞り込んで分析した結果、評価4のビルは3と比較して5.5%、評価5のビルは4と比較して4.6%の賃料押し上げ効果が確認された。
なお、評価3〜5を取得しているそれぞれのビルについて、2019〜2023年の5年間の評価取得前後での新規成約見込み賃料の変化について分析を行った結果、評価3と4のビルは統計的に有意差がなかったが、評価5のビルは取得前後で4.9%上昇することが確認された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.