大成建設の設計作業をAIでサポートする「AI設計部長」に、希望条件に合致した最適案を短時間で生成する新機能を追加した。建築基準を考慮した建築可能範囲を算出し、複数建築パターンの概略設計案を自動生成し、敷地に対してどのくらいの規模や形状などの建物を建築できるかの検討が容易になる。
大成建設は、AIを活用した設計支援システム「AI設計部長」の機能を拡張し、建物の最適な設計パターンの中から顧客の希望条件に合致した最適な設計案を短時間で選び提供できる新たな設計ツールを開発したと2024年3月21日に発表した。
2022年に発表したAI設計部長は、過去の設計業務の知見やノウハウを集積した設計技術データベースから、AIが最適な情報を抽出することで、設計担当者の業務を支援するシステム。設計業務が大幅に効率化し、施主に対して高付加価値な提案が迅速かつ的確に実施可能になる。
通常、敷地に対して最大限どのくらいの規模や外観、形状などを有する建物を建築できるかの“ボリュームスタディー”では、顧客の要望に応じて個々の設計者が対象敷地の法規制などの固有条件を踏まえ、どのような規模の建物を建設できるかを検討し、概略設計案を作成する。しかし、諸条件の組み合わせで、その設計パターンは膨大な件数となるため、候補となる設計案の絞り込みには時間を要し、検討対象から最適な設計案を取りこぼす恐れがあった。
そこで大成建設は、AI設計部長の機能の一つとして、建物の建築可能範囲を自動算出し、短時間で多様なパターンのボリュームスタディーを実施し、顧客の希望条件に合致する設計案の比較検討や絞り込みで、最適な設計案を選定できる新たな設計ツールを開発した。
オフィスビルをはじめ建物設計の初期検討段階で実施するボリュームスタディーに適用すれば、指定条件を満たす多くの設計案の中から敷地のポテンシャルなどを最大限に生かせる最適な設計案を迅速かつ容易に抽出できる。さらにBIMデータへの出力にも対応し、詳細設計への移行がスムーズになり、建物設計の高度化や効率化につながる。
新機能となる建築可能範囲の自動算出は、敷地条件から建ぺい率や容積率、道路斜線/隣地斜線/日影などの建築基準を踏まえ、建物の建築可能範囲(建物ボリューム)を自動算出。入力する設定条件を変更すれば、多様なパターンの建物ボリュームを得られる。
生成された複数の建物ボリュームをもとに、階高、天井高、エレベーター、配管などを収めるコア位置、建物規模を示す奥行き/長さなど、仕様が異なるさまざまなパターンの概略設計案(平面ゾーニングプランと概略面積表を組み合わせたボリュームスタディー案)も自動で生成される。
設計者は複数パターンの概略設計案の中から、建築計画上の条件を考慮した値や範囲を指定することで、顧客の要望に沿った設計案を比較検討し、条件を満たす複数の設計案に絞り込める。最終的に選択した設計案をベースに、顧客の要望に合わせた魅力的な提案にブラッシュアップすることも可能で、設計案はBIMデータ(Revitデータ)への出力に対応しているため、詳細設計に効率よく展開できる。
今後は、設計技術データベースを基本としたAI設計部長に加え、各種デバイスやアプリケーションなどのICTを用いたツールを連携し、建物設計のさらなる高度化や効率化に取り組んでいくとしている。
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