三井住友建設と住友大阪セメントは、塩害で劣化した中小規模のコンクリート橋を対象に、耐荷性と耐久性を簡単な作業で向上させる「アラミド繊維・電気防食併用工法」を共同開発した。既に橋梁を模擬した試験体で、屋外暴露や載荷をテストして、工法の効果を確認し、実用化にめどを付けている。
三井住友と住友大阪セメントは2023年10月17日、「アラミド繊維・電気防食併用工法」を共同開発したと発表した。新工法は、塩害で劣化した中小規模のコンクリート橋で、耐荷性と耐久性を向上させる。
仕組みとしては、チタン製の薄いテープ式陽極材を、橋梁(きょうりょう)の下面や側面などコンクリート構造物表面に貼り付け、その後アラミド連続繊維シートを接着し、陽極材を固定して補強する。従来の電気防食工法と比べ、陽極材の施工で省力化とコスト削減が図れる。
アラミド連続繊維シート補強による耐荷性が向上し、電気防食で耐久性がアップする。両材料は軽量かつ柔軟性があり、これまではコンクリートに埋め込んでいたが、コンクリート面への貼り付けられるようになった。アラミド連続繊維シートでテープ式陽極材の剥離(はくり)を防止するために、防食効果の長期安定性も期待できる。非伝導材料のアラミド連続繊維シートは、防食電流の分布を阻害せず均一な防食効果が得られる。
国内では、多くのコンクリート橋が供用開始後40〜50年を経て老朽化しつつあり、適切な維持管理が必要とされている。特に沿岸部は、飛来塩分の影響で鉄筋腐食やコンクリートの浮きや剥離、ひび割れなどが多数報告されている。
こうしたインフラ構造物の損傷は、初期段階では影響が少ないが、長く放置すると主桁補強鋼材の腐食、耐荷性能低下が予測され、早期の対策が求められる。また、塩害を受けた橋梁は、断面修復を行っても、内在塩分で再び塩害が発生する。
その対策で、耐荷性の向上を目的とした補強と、耐久性を上げる防食が同時に必要となるため、工事が大掛かりになってしまう。そこで、三井住友建設は、容易な作業で耐荷性と耐久性を効率的に向上させられる新工法を開発するに至ったという。
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