技研製作所のインプラント工法は、先に圧入した杭を利用して新しい杭を圧入する工法。堤防、護岸壁などの工事に用い、建機の稼働用に仮設スペースを用意する必要もない利点があり、オランダをはじめ、海外の公共事業でも採用されている。
技研製作所は、「第5回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2023)」(会期:2023年5月24〜26日、幕張メッセ)で、インプラント工法の優位性をアピールした。
技研製作所は、公害に対処する技術を提供することを目指し1967年創立の企業(旧社名は高知技研コンサルタント)。1975年には、建設現場の杭打ち工事で発生する振動と騒音を回避する無公害杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を完成させた。以降は一貫して、地中に挿入した杭が発生させる引き抜き抵抗力を利用して新しい杭を打ち込む「インプラント工法」と専用建設機械の開発を続けている。
技研製作所のインプラント工法は、杭を地中に打ち込む際の建機が、既に打ち込んだ杭の上で稼働する。杭の打ち込み機は、打ち込んだ複数の杭をつかんだ状態で、移動の足場としながら、さらに新しい杭を打ち込む。
新しく杭を打ち込むには、打ち込み機が浮き上がろうとする力(圧入の反作用力)を抑える必要がある。インプラント工法では、この力を地中に打ち込んだ杭をつかむことで得る。地中に打ち込まれた杭には、引き抜かれまいとする抵抗力が発生するため、打ち込んだ杭4本をつかめば、新しい杭を打ち込むのに十分な圧入力が得られる。
もともと、技研製作所は工事に関する公害に対処する企業理念を根底に置き創業した。工事に関する公害とは、杭の打ち込み工事に伴う騒音や振動を指す。インプラント工法は、工事の際の騒音や振動を軽減する工法としても有効となる。
インプラント工法では、重りを上からたたきつけるのではなく、圧入によって杭を地中に挿入。そのため、従来に比べ、静かで振動の少ない工事が実現する。また、既に打ち込んだ杭をつかんで圧入の反作用力を得るため、建機そのものが従来よりも軽量でコンパクトで済み、建機の移動や稼働でも音が出にくい。
さらに、既に打ち込んだ杭の上を移動して新しい杭を打ち込むので、打ち込み機の稼働スペースをあらかじめ確保しなくてもよい。崩落した山の斜面に防護壁を作る場合でも、打ち込み機用の仮設工事は不要で、時間との戦いとなる修復工事で大きなメリットとなる。
仮設工事が要らなければ、これまで工事そのものが困難だった場所でも杭工事が可能になる。例えば、上空に高さ制限がある橋や道路などの下、狭所の敷地、傾斜地、水上などだ。
仮設工事が無ければ、工期短縮にもつながり、工事費用もコストを抑えられる。他にも、工期のスピードアップは、機械類の稼働時間を最小限にとどめ、CO2排出量の削減やエネルギー消費の提言にも寄与する。
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