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» 2022年06月16日 07時00分 公開

1車線規制で床版取替が可能な床版更新システムを開発、鹿島建設導入事例

鹿島建設は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制などによるソーシャルロスの低減を達成する「スマート床版更新システム」の開発を進めている。なお、2019年には「全断面(2車線道路の場合2車線規制)取替」を対象とした「全断面SDRシステム」を開発し、2023年以降に実工事に適用予定だ。さらに、ソーシャルロスの低減を達成する「幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替」を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発した。

[BUILT]

 鹿島建設は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制などによるソーシャルロスの低減を達成する「スマート床版更新(SDR※1)システム」の開発を進めていることを2022年6月7日に発表した。

※1 SDR:Smart Deck Renewal。

4つの作業を同時に並行して行う「移動式工場」を実現

 道路橋の床版取替工事は、供用中の施設が対象となるため、交通規制などによるソーシャルロスを最小限にすることが必要となっている。一方、交通量の多い路線では床版を幅員方向に分割して施工を行う「幅員方向分割取替」の適用が求められている。

 しかし、幅員方向分割取替工事にあたっては、隣接する交通開放側の床版からの交通振動が接合部に与える影響への対策や交通開放側の車両に対する安全対策だけでなく、全断面取替よりもコンパクトな架設機が必須だった。

 そこで、鹿島建設は、クレーンでの旋回を伴う床版の揚重作業が不要な新型架設機を開発した他、施工の高速化と交通規制の最小化、安全性の向上が図れるシステムを開発し、2019年に全断面に対応する仕様に仕上げ、実用化した。その後、ソーシャルロスの最小化を目指して、幅員方向に床版を分割して取り換えられるSDRシステムに発展させた。

スマート床版更新システムの概要図 出典:鹿島建設プレスリリース
スマート床版更新システムのイメージ 出典:鹿島建設プレスリリース

 SDRシステムは、床版取替にかかわる4つの作業「既設床版の撤去」「主桁ケレン」「高さ調整」「新設床版の搬入・架設」を同時に並行して行う「移動式工場」を実現した施工システムで、標準的な工法と比べ、工期の短縮を実現する。

 具体的には、「交通振動対応仮設プレート型継手」「ワンタッチ型SB種防護柵」「車載運搬型床版架設機・撤去機」で構成されている。

 交通振動対応仮設プレート型継手は、交通開放側の床版と規制側床版を2枚のプレートとPC鋼棒により仮接合し、両者を一体化することで振動の影響を避けられ、交通振動による影響を解消して、間詰材の品質を確保する。

 これにより、幅員方向分割取替における交通開放側の床版と規制側床版の接合部(橋軸直角方向接合部)に充填する間詰材で、硬化中に交通開放側の床版からの交通振動で発生するひび割れを防げる。

「交通振動対応仮設プレート型継手」のイメージ 出典:鹿島建設プレスリリース

 ワンタッチ型SB種防護柵は、幅30センチの占有でSB種の性能を担保し、ワンタッチで設置・撤去可能なため、作業エリア内に一般車両が誤進入することを防止し、規制範囲の最小化を達成する。

「ワンタッチ型SB種防護柵」のイメージ 出典:鹿島建設プレスリリース

 車載運搬型床版架設機・撤去機は、床版架設・撤去機を10トントラックと15トントレーラーで運搬し、クレーンを必要とせずに安全かつ高速に組みて立て・撤去が行える。

「車載運搬型床版架設機・撤去機」のイメージ 出典:鹿島建設プレスリリース

 また、鹿島建設は2022年4月に、幅員方向分割SDRシステムのサイクルタイムと施工安全性の検証を目的とした実物大総合実証実験を行った。その結果、床版取替の工程を標準的な施工方法に比べて、約10分の1に短縮し、システムの有用性を確認した。

 加えて、工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することで、床版の製作経費や運搬費を減らせ、工事費の約2割低減が見込めることも分かった。

「実物大実証実験」(左)と標準工法との施工枚数の比較(幅員方向分割取替)(右) 出典:鹿島建設プレスリリース

 実物大実証実験で所期の結果を得たことを受け、今後は実工事への適用に向け、SDRシステムを提案するだけでなく、自動化をはじめとした機能向上についても研究開発を進め、交通規制などによるソーシャルロスを最小限にとどめる道路橋床版更新工事を実現する。

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