阪神高速道路と鹿島建設は、「超高強度繊維補強コンクリート(UFC)道路橋床版」を共同開発し、阪神高速道路のリニューアル工事に初適用した。UFC床版は、超高強度で高い耐久性を保持し、軽量化を実現した床版で、道路橋床版の取替え用として、これから老朽化した高速道路のリニューアル工事に適用されていくことが見込まれる。
阪神高速道路と鹿島建設は、2011年より共同で開発を進めていた「超高強度繊維補強コンクリート(UFC)道路橋床版」を阪神高速道路15号堺線の玉出入路リニューアル工事へ試験的に適用し、2018年11月12日に供用を開始した。
UFCは、阪神高速道路と鹿島建設が開発を進めてきた水結合材比が15%程度で、圧縮強度が150N/mm2(ニュートンパー平方ミリ)以上ある緻密な鋼繊維補強コンクリート。
現在、高度成長期に建設された高速道路橋では、供用年数の経過とともに、老朽化した鉄筋コンクリート(RC)床版を取り換えるリニューアル工事が順次進められている。リニューアル工事では、車両の大型化に伴い改訂された現行基準に従うと、重荷重に耐えられる耐久性の高い床版に取り換えなければならない。しかし、標準的な取替え用床版を使用した場合は、既設RC床版の厚さ180mm(ミリ)に対し、現行基準に従うと250mmもの厚さが求められ、既設床版より厚く重い構造となるため、床版を支える鋼桁、橋脚、基礎構造に、補強が不可欠となる。
阪神高速道路と鹿島建設が共同開発したUFC床版は、超高強度かつ高い耐久性を有するため、150mmまでの薄肉化が可能となり、床版取替えに伴う道路面の高さを変更する必要が無い。既設RC床版の重量を100とした場合、標準的な取替え用PC床版の140に対して、UFC床版の重量比は80と軽量になるため、床版を支える鋼桁の補強が少なくて済むメリットもある。
橋軸方向にプレストレスを導入する床版の構築では、PC鋼材を緊張するためにジャッキの設置スペースが必要で、このスペースには、緊張作業終了後にジャッキを撤去して場所打ちコンクリートを行うため、端部に継ぎ目が生じる。
今回の平板型UFC床版の設置では、PC鋼材の緊張作業をスパン中央部の床版下部から2方向に行う新たな工法を採用している。UFCの優れた材料特性を生かし、定着構造をコンパクト化することで可能になった工法で、継ぎ目のない“オールプレキャスト化”によって、さらなる耐久性の向上が図れるという。
実際に適用したリニューアル工事(工期:2017年12月〜2019年1月)では、高速道路本線と側道とに挟まれた斜路での現場となったため、狭いヤード内での作業を効率化する目的で、橋軸方向に移動するコンパクトな「専用架設機」を開発して適用した。床版の荷受け、運搬、据付けにクレーンを用いる一般的な作業方法と比べ、クレーンの旋回による本線通行車両の規制などが不要となり、高い効率に加えて安全な床版架設が実現した。
鹿島建設では今後、今回適用した平板型だけでなく、部材厚を最小化し床版の重量を鋼床版とほぼ同等まで軽量化したワッフル型も併せて、普及展開を図っていくとしている。
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