■経営者人材を育てられるか〜経営者育成は時間がかかる〜
新たに傘下入りする会社の経営者(社長)を誰が務めるのか。そもそも後継者がいないので、傘下入りを決断することも多いだろう。グループとして経営者人材を育てておかないと、M&Aを進めることはできない。さらに建設業は、建設業許可を受けるために、「建設業で(取締役などの)経営経験を5年以上有する」の要件を満たした経営管理責任者を置かなければならないという制約がある。
傘下入りしてもらうタイミングで、現経営者に退任いただくか、しばらくは社長業を務めてもらうかは、グループのスタンスやそのときの状況によるが、後任の経営者候補を準備しておく必要性と、経営者を育てるには時間がかかるということを認識しておかねばならない。
■ホールディングカンパニーの経営者人材に求められるもの〜大局観と戦略思考〜
図3は、経営者人材に求められる能力や資質を整理したものである。ホールディングカンパニーの役員と事業会社の社長を兼務するケースはあってよいが、求められる能力や資質は本質的に異なる。
仮に事業運営会社の社長または取締役が務まったとしても、ホールディングカンパニーの役員も務まるかというと、必ずしもそうではない。事業会社の社長に「損益責任(利益を上げる責任)」のみを課し、資産の増減を伴う意思決定権限や資金調達機能をホールディングカンパニーが担うのであれば、なおさらである。また、ホールディングカンパニーの役員をどう育てるかも、グループ経営の展開における外せないテーマだ。
グループ経営を展開している会社を見ていると、ホールディングカンパニーの社員と事業会社の役員や社員の関係性が良くないケースに遭遇することがある。ホールディングカンパニー側にその意識は無いが、「ホールディングカンパニーが上、事業会社は下」のような関係性や雰囲気が自然とできてしまい、何かにつけて物事がうまく進まなくなる。
同じ企業内であっても、営業と生産、現場と本社など、立場が違えば考え方も違い、関係性が悪くなることもある。まして、ホールディングカンパニーと「買収された」意識がある事業会社側で、初めから分かり合える関係性など、望むべくもない。だから、ホールディングカンパニー側から事業会社に歩み寄り、「支える」というスタンスで立場の違いを乗り越える努力をしなくてならない。
【第5回】建設現場での残業規制への対処法、現場代理人の働き方を変えるには
【第4回】人口減時代を乗り切る、地場ゼネコン2社の“サステナブル・モデル”事例報告
【第3回】「背中を見ろ」では今の若手は育たない〜建設業界が理解すべき人材育成のキーサクセスファクター〜
「IT監督」が中小建設業のDXを全面支援、飛島建設とNTT東日本が4月にBPOサービス会社設立
ミライト・ホールディングスが子会社2社を吸収合併、新事業でスマートシティーを支援
海外の設計者集団Studio aiと提携、建築・内装・家具のスタートアップ「TOMOSU」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10