成果検証によって、次のような効果が見られた。同社では、現場代理人の業務を見える化し、本来やるべき業務(コア業務)への時間配分を高め、一般業務の分業化・効率化を進めた。その結果、現場代理人が1つの工事終了後、次の工事に取り掛かるまでに要する期間が「2カ月から0.5カ月に短縮」となり、生産性(現場代理人一人当たりの工事請負額)でも1年後に103%、2年後に125%と改善が見られた。
これまで同社の現場代理人は、竣工後、次の現場に移るまでに約2カ月間を要していた。それは現場代理人が、竣工後にさまざまな書類作成や事務処理、施主対応など、多岐にわたる業務を抱えていたためである。しかし、そうした業務の多くは、「現場代理人以外でも対応可能な業務(一般業務)」であった。働き方改革プロジェクトでは、業務の進め方そのものを見直し、止めることと改めること(分業化・簡素化・標準化・IT化)を決め、実行した。
例えば、竣工図の作成である。これまで現場代理人は、竣工後、竣工図面の作成に約1カ月を費やしていた。その業務負担は大きく、多くの現場代理人から改善を求める声が挙がっていた。
改善策として、本社に図面作成ができる担当者(CADオペレーター)を配置し、工事が進行している間で、図面の変更が生じるたびに、日々現場代理人からCADオペレーターへ図面変更を依頼し、CADオペレーターが図面を修正するというスタイル(分業化)へと変更した。その成果として、現場代理人の業務は軽減され、竣工図作成にかかる時間・品質についても均一化されることとなった。最終的には、現場代理人業務の負荷軽減が進むとともに、あるべき形へ標準化を進め、生産性改善につながった。
筆者は、多種多様な企業の業務改善に関わるなかで、改善が成功するかどうかの分かれ目は、「まずは、やってみる」のマインドを社として持てるかどうかにあると考える。
改善が進まないケースは、改善の方向性は見えているものの、実行段階で「やり方を変えるのは面倒。うまくいくかどうか分からない。だから、今のままで良い」という固定観念が幹部の根底にある場合だ。こういうときは、往々にして、改善は進まない。
一方で、改善が成功するケースは、「やり方を変えるのは面倒、うまくいくかも分からない。だけど、まずは、やってみる」という一歩を踏み出せる際である。こういう企業は、取り組むスピードも速く、高速でPDCAが回る。その結果として、現場が変わる。
「働き方を変えたい」「現場を改善したい」「体質強化を図りたい」との考えを持っているならば、「まずは、やってみる」、変革の一歩を踏み出すことへチャレンジしていただきたい。
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