【第5回】建設現場での残業規制への対処法、現場代理人の働き方を変えるには建設専門コンサルが説く「これからの市場で生き抜く術」(5)(2/2 ページ)

» 2022年02月23日 10時00分 公開
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3.「やめる」「改める」(分業化・簡素化・標準化・IT化)を決める

 成果検証によって、次のような効果が見られた。同社では、現場代理人の業務を見える化し、本来やるべき業務(コア業務)への時間配分を高め、一般業務の分業化・効率化を進めた。その結果、現場代理人が1つの工事終了後、次の工事に取り掛かるまでに要する期間が「2カ月から0.5カ月に短縮」となり、生産性(現場代理人一人当たりの工事請負額)でも1年後に103%、2年後に125%と改善が見られた。

 これまで同社の現場代理人は、竣工後、次の現場に移るまでに約2カ月間を要していた。それは現場代理人が、竣工後にさまざまな書類作成や事務処理、施主対応など、多岐にわたる業務を抱えていたためである。しかし、そうした業務の多くは、「現場代理人以外でも対応可能な業務(一般業務)」であった。働き方改革プロジェクトでは、業務の進め方そのものを見直し、止めることと改めること(分業化・簡素化・標準化・IT化)を決め、実行した。

 例えば、竣工図の作成である。これまで現場代理人は、竣工後、竣工図面の作成に約1カ月を費やしていた。その業務負担は大きく、多くの現場代理人から改善を求める声が挙がっていた。

 改善策として、本社に図面作成ができる担当者(CADオペレーター)を配置し、工事が進行している間で、図面の変更が生じるたびに、日々現場代理人からCADオペレーターへ図面変更を依頼し、CADオペレーターが図面を修正するというスタイル(分業化)へと変更した。その成果として、現場代理人の業務は軽減され、竣工図作成にかかる時間・品質についても均一化されることとなった。最終的には、現場代理人業務の負荷軽減が進むとともに、あるべき形へ標準化を進め、生産性改善につながった。

4.「まずは、やってみる」マインドを持つ

 筆者は、多種多様な企業の業務改善に関わるなかで、改善が成功するかどうかの分かれ目は、「まずは、やってみる」のマインドを社として持てるかどうかにあると考える。

 改善が進まないケースは、改善の方向性は見えているものの、実行段階で「やり方を変えるのは面倒。うまくいくかどうか分からない。だから、今のままで良い」という固定観念が幹部の根底にある場合だ。こういうときは、往々にして、改善は進まない。

 一方で、改善が成功するケースは、「やり方を変えるのは面倒、うまくいくかも分からない。だけど、まずは、やってみる」という一歩を踏み出せる際である。こういう企業は、取り組むスピードも速く、高速でPDCAが回る。その結果として、現場が変わる。

 「働き方を変えたい」「現場を改善したい」「体質強化を図りたい」との考えを持っているならば、「まずは、やってみる」、変革の一歩を踏み出すことへチャレンジしていただきたい。

著者Profile

大裏 宙/Hiroshi Ooura

前職にて店舗出店・改装業務を経験後、タナベ経営に入社。さまざまな実務経験を生かした現場重視の実践的なコンサルティングを信条としている。現在は、ドメインコンサルティング大阪本部 部長代理で、建設ソリューション成長戦略研究会ではサブリーダーを務める。主な担当業務は、建設業における事業計画策定、人材育成の仕組み作り、業務改善、人事制度構築、管理職研修などに取り組み、顧客と一体になって、マネジメントの改善、事業改革に取り組み、企業の成長を支援している。

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