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» 2021年06月25日 10時00分 公開

【第2回】建設業は“残業規制”にどう対処すべきか?工事監督の業務時間を1日1.5時間削減した事例から建設専門コンサルが説く「これからの市場で生き抜く術」(2)(1/2 ページ)

本連載では、経営コンサルタント業界のパイオニア・タナベ経営が開催している建設業向け研究会「建設ソリューション成長戦略研究会」を担う建設専門コンサルタントが、業界が抱える諸問題の突破口となる経営戦略や社内改革などについて、各回テーマを設定してリレー形式で解説していく。第2回は、建設業にも差し迫る時間外労働の上限規制にどのように対応していくべきか、業務改善の事例を交えレクチャーする。

[濱大輔(タナベ経営 ドメインコンサルティング東京本部 チーフコンサルタント),BUILT]

I.働き方改革の背景

 少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働の問題は、長らく日本で問題視されてきた労働環境である。将来の日本における国内生産力の低下を防ぐため、2019年4月に働き方改革関連法が施行された。同法では、「労働時間の見直し」と「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を趣旨とした各取り組みが盛り込まれている。

 なかでも特筆すべきは、「時間外労働の制限」だが、簡単に内容を記載すると、法定労働時間(1日8時間および1週間40時間、毎週少なくとも1回の休日)を超えて労働させるためには36(サブロク)協定を結ぶことになるが、これまでは罰則による強制力がなかったところ、施行後は「原則月45時間・年360時間」とする罰則付きの上限が明示された。罰則は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と定められており、残業代を支払っていたとしても規定時間を超えると、罰則が科せられるので注意が必要である。

 上記の働き方改革関連法について、建設業は5年の猶予期間が設けられ、2024年4月から適用されることは周知の通りである。3年後の適用に向け、法令順守に向けた業務体制・環境の整備が急務となっている。

2024年4月からは建設業も残業規制の対象に Photo by Pixabay

II.1日1.5時間を削減した働き方改革の事例

 Y県にある建設会社N社(売上約200億・社員約300人)は、全国4支店8営業所を展開しているエリア密着型の建設会社。同社は工事監督(現場代理人)の長時間労働が長年の課題であり、2024年の働き方改革関連法適用に備えて、2019年より「工事監督の働き方改革」に取り組んだ。

 同社では、現状を正しく把握するために工事監督の働き方の実態調査を実施した。調査は3段階で行い、まず(1)工事監督の業務を棚卸し、本来は正社員の監督がやるべき業務とそうでない業務を分類。そして(2)1日の具体的行動を2週間サンプリングし、「現場確認」や「書類作成」「顧客打合せ」「社内打合せ」「移動時間・休憩など非稼働時間」といった業務に1日どれくらいの時間を費やしているのかデータを集約した。さらに(3)業務フロー上における設計や営業、顧客との連携部分での問題点を洗い出した。これは、業務の連携部分に課題の真因があることが多いためである。

工事監督の働き方の実態調査で行った正社員の監督がやるべき業務とそうでない業務 出典:タナベ経営作成

 上記の現状認識の結果、工事監督が行っている業務の32%が本来「やるべきでない業務」であり、その業務を1日の時間に換算すると約3時間に上った。工事監督の平均労働時間が1日11時間であった同社では、残業部分に相当する3時間とほぼイコールであり、業務改善のメスを入れるポイントが可視化されることにもなった。

1日の業務で現場監督がやるべき業務とそうでない業務の割合 出典:タナベ経営作成
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