@propertyは、BIMと連携できることが大きな特徴となっている。BIM連携すると、それまではテキストで行っていたファシリティ情報の管理が3次元モデルで可視化できるようになる。講演ではBIMデータの活用例として、東京都新宿区の「東京オペラシティビル(地下4階地上54階、延べ床面積24万2544平方メートル)」でのプロジェクトを紹介した。
プロジェクトでは、新築時の設計段階で作成されたBIMデータを建物の維持・管理のフェーズでも活用することを試みた。不動産管理システムとBIMデータを連携させることで、維持管理の高度化や生産性の向上が期待でき、施設の長寿化やコスト最適化が図れる。
例えば、BEMSからエネルギー情報を取り込み、BIMデータと連携することで、テナントや区画、あるいは機器ごとのエネルギーの消費量を視覚化できる。また、不動産の契約情報とBIMをつなげば、入居するテナントの場所や広さ、区画の確認なども3次元モデルでイメージがつかみやすくなる分かる。
とくに、このところの契約に関しては、さまざまな区画の組み合わせや契約スペースの変更・減少などで複雑な契約が増えているという。光延氏は、「複雑な契約案件でも目に見える形で、確認可能なことが不動産の管理では有効になり得る」と話す。
光延氏は、不動産管理にBIMを活用する際のポイントとして、情報の粒度を挙げた。建物の設計時に作成するBIMデータは、細かい単位の情報から成る。しかし、建物の維持・管理で活用するには、粒度が細か過ぎてしまう。そのため、@propertyでは不動産の管理用途に適したBIMデータの登録手法を開発している。
柱や梁(はり)、外壁といった普遍的なオブジェクトは正確に入力するが、賃貸スペースの間仕切り壁や専有面積などの可変オブジェクトは、モデル化するか空間として登録することで、不動産管理で使いやすいデータとなる。
このような調整を行った上でデータを一元管理すると、これまでは人の経験や勘に頼っていた管理業務が客観的かつ視覚的に効率化できるようになる。また、エネルギー情報などは、入居のテナントに開示することでエンゲージ強化として期待できる。
光延氏は、「不動産管理DXは、生産性の向上はもとより、資産価値の向上やテナントの契約獲得にも貢献するだろう」と語る。施設を管理する側と利用する側の双方に良い効果を与えることが、「BIMを活用した不動産管理DXのゴール」との考えを示して講演を終えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.