今回の講演で中心テーマとなる“不動産管理DX”は、不動産テックの中でもファシリティマネジメントにフォーカスしたものとなる。
不動産管理DXでは、「プラットフォーム構築」「生産性向上」「デジタルデータ活用」の3つのステップで環境整備から実際の活用まで進む。このうちプラットフォーム構築のフェーズでは、テナント情報や工事情報、メンテナンスなど多彩な情報がデータベース化され、既存のBIMとの連携も行われる。
データベースは、その後の生産性向上の段階で、企業間の連携や分析、レポート作成自動化など、さまざまな場面で利用される。さらに、高度化のステップでは、生産性向上のために分析・蓄積されたデータを新しいデータと合わせて解析することで、今までにはないデジタルデータの有効活用が可能になる。
これまでの不動産業界では、施設の管理に限らず、どちらかというと担当者依存の傾向にあった。経験や勘といった“暗黙知”に依存する部分が多かったのは否めないだろう。「こうした曖昧だった部分に、第三者目線の分析を入れていく。いわゆるAIなどを活用して今までの担当者依存から脱却していくことが、最終的なゴールにつながる」と不動産管理DXの意義を示した。
DXのベースとなるクラウドには、IssS、PaaS、SaaSなどの種類がある。このうち、不動産テックでは、アプリケーションを含めた形でサービスを提供するSaaSが主流となる。光延氏が所属するプロパティデータバンクが提供する@propertyもパブリッククラウド上のSaaSでサービス展開している。
@propertyの提供をパブリッククラウド上にしている理由は、不動産関連で扱うデータの性格によるものだ。不動産テックで成果を得るには、さまざまな種類や粒度のデータを扱う必要がある。ただ、不動産関係にはさまざまなプレーヤーが存在し、それぞれが多様なデータを保持しており、利用しているシステムにも違いがある。
光延氏は、クラウド上に集約するには、データ連携がしやすいパブリッククラウドが適切とした。不動産管理を提供するシステムには、さまざまな立場のユーザーがそれぞれの目的に応じてアクセスをする。そのため、パブリッククラウド上で稼働するシステムであればアクセスがしやすい。
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