手持ち工事高と同様に、今後の建設市場に大きな影響を与える「元請け受注工事高」について、1月から9月までの過去3年間の月別推移を比較すると、2021年は5月から8月にかけて、2019年と2020年との比較で、低下傾向となっていたが、3年間いずれも9月には上昇に転じている(図表10)。
※2 本レポート執筆後、「建設受注動態調査」の二重計上などの不正が報道された。本レポートで主に使用している「建設総合統計」は、「建設受注動態調査」をベースとした2次統計のため、数値への影響が懸念されるが、建設市場の動向を考察する参考情報として活用できるものと考え、レポートの発信をした。あらかじめご了承いただきたい
民間工事と公共工事に分けてみると、2021年の民間元請け工事受注は、9月に2019年比46.5%増、2020年比21.0%増と大幅な増加となった(図表11)。
一方、公共元請け受注工事について、2021年は好調に推移してきたが、7月以降は3カ月連続で、2020年との比較で大幅な減少となった(図表12)。このことから、公共工事はやや減少傾向に転ずるのではないかと推測される。
2021年1月から9月までの建設市場は、東京五輪を控えて建設需要がピークを迎えていた2019年と比較して0.4%減となったものの、コロナ禍にあった2020年との比較では0.6%増と比較的堅調に推移していることが分かった。民間工事と公共工事では、民間工事は2019年比6.1%減で、2020年比0.3%増とやや低調。一方、公共工事は2019年比8.3%増、2020年比1.1%増と好調で、公共工事が2021年の建設市場を底支えしたことがうかがえる。
2022年の展望について、2021年の手持ち工事高は全ての月で2019年と2020年をともに上回る高水準で推移していることから、2022年の建設市場も堅調に進むと推測される。ただし、中期的展望では、公共工事はやや減少傾向になっていることから、今後の民間工事の復調度合いが建設市場に大きな影響を与えると考えられる。
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