次に売買の業況の推移を見ていきます。賃貸同様、2020年4〜6月期に過去最低の業況DIとなって以降、順調に回復してきたものの、2021年1〜3月期からは首都圏・近畿圏ともにほぼ横ばいとなっています。それでも直近7〜9月期の業況DIを前年同期比で見ると、首都圏+5.4ポイント、近畿圏+9.2ポイントと大幅プラスになりました。
本連載でこれまでもお伝えしてきた通り、消費者の購入意欲は旺盛です。コロナ禍以降、在宅時間が長くなったことで、住環境を充実させたいと考える人が増えたことに加え、住宅ローン金利の低さも後押しとなっているようです。
なお、来期の業況DIは、首都圏46.2(今期比+1.0ポイント)、近畿圏44.3(同+1.9ポイント)と両エリアともに上昇する見通しとなっているものの、その上昇幅は賃貸ほど大きくありません。その理由は、業況水準が賃貸よりも高いこと、また、コロナ禍の移動制限で住まい探しを中止・延期が余儀なくされた賃貸派に対して、売買派は購入計画を変えることも少なかったので、いわゆる反動増がないためだと思われます。
最後に、前出の景況感調査の対象不動産店に、災害リスクに関する調査を併せて実施しましたのでご紹介します。
災害リスクに関して、消費者からの質問の中で増えた項目は、「洪水・浸水」が35.4%で最も多く、次いで「土砂災害」18.6%、「地震・津波」13.5%が上位を占めました。3年前の同調査と比較すると「洪水・浸水」が+11.5ポイント、「土砂災害」は+7.1ポイントと大幅に増加しました。一方、「建物構造」は−8.1ポイント、「地震・津波」は−7.1ポイントと減少しており、最近は地震よりも、台風に伴う局地的豪雨や大規模な土砂災害などが頻発していることが影響していると考えられます。
こうした自然災害も、新型コロナウイルスと並ぶ大きな脅威と言えます。住まいには、これまで以上に安心・安全であることが求められるでしょう。
新型コロナウイルスについては、新たな変異種も現れるなど、先行きは見えにくい状況です。それでも、現時点では制限は徐々に緩和されていることから考えると、住まい探しの動きは賃貸・売買ともに2021年よりも活発になっていくでしょう。コロナ禍で定着したテレワークや郊外需要の高まりなどがどうなっていくのかも含め、今後の動向を注視したいと思います。
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