大林組がBIM国際規格「ISO 19650」の認証取得、大手ゼネコン初の目的と意義を探るBIM(2/2 ページ)

» 2021年11月10日 18時18分 公開
[石原忍BUILT]
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BIM業務フローの明文化と情報管理の基準確立

 大林組では、大手ゼネコンのなかでも、いち早く2010年代よりBIM活用に取り組み、現在は請負金額10億円以上を目安に、2020年に着工した新築工事では100%のBIM化を達成。ここ最近は、BIM標準ソフトをRevitとするなど自社で定めたルールに則(のっと)り、BIMモデルを意匠・構造・設備の設計情報に生産情報も統合した設計・施工で情報を一貫利用可能な“ワンモデル”で運用する環境を整備している。

設計情報と生産情報を統合・整備した“ワンモデル”の概念図。BIMモデルにさまざまな情報を集約することで、情報(Infomation)の一貫利用が可能に 出典:大林組プレスリリース

 ISO認証取得の中心的役割を果たしたiPDセンターで部長を務める本谷淳氏は、「これまでBIMプロジェクトを実施する際に、業務フローは標準的な在り方に準じていたが、明文化がされておらず、国際標準に沿っているかどうかも判断できていなかった。そこで国際規格の取得過程でISO 19650を模範にして、業務要領書などを改めて整理し、発注者、設計者、協力会社、委託先を含めた情報管理の基準を確立すれば、プロジェクト管理の合理化や効率化が図れるのではと考えた」と認証取得の意図を語る。

 ISOの審査では、iPDセンター主導のもと、若手社員十数人も加わってチームを結成し、東京と大阪でMicrosoft Teamsを介して作業を分担しながら行った。「最も苦労したのは、原文が英語表記ゆえに、記載されている造語の真の意味を理解しなければならないなど、規格の解釈に手を焼いたこと。その点は、BSIグループジャパンのトレーニングなどでサポートを受けつつ、参加者が学びながら、最終的に誰もが分かりやすい形で手順書などをまとめられた」(本谷氏)。

 また、認証取得の作業を進めたことで、情報の流れを体系的に捉えることにつながったことは成果としながらも、浮かび上がった課題としては、日本では入札時に発注者からEIR(発注組織の情報交換要求事項)が提示される案件は稀(まれ)のため、審査で提出する事例として情報の工程を一貫して説明できる適切なプロジェクトが無かったので資料作成に戸惑いも生じたという。「今後は、発注者からのISOに沿った要求も増えてくることが見込まれるので、ISOを取得したことは海外市場も視野に入れた営業的な優位性と社会へのアピールにつながるだろう」(本谷氏)。

 しかし仁井田氏は、ISO 19650に準拠したBIMの運用は、大林組単独だけではなく、グループ会社や関連会社、発注者も同一のルールで運用しなければ合理化や効率化のメリットを享受しにくいと指摘する。「関係各社にもISOを取得してもらったり、取得せずともBIM認証のトレーニングを受講してもらったりするなどして、ISOに準拠した同一の考え方を共有してもらうことが理想だ」。

 今回、大林組はVerificationでの取得となったが、2022年にはステップアップしてKitemarkの取得、その先にはCDEなどのクラウド運用で避けては通れない“セキュリティ”に関する規格「ISO 19650-5」にも挑戦する。

 BSIグループジャパンでも、設計・施工の次に、海外で既に先行しているセキュリティ分野に加えてアセットマネジメント(施設の維持管理)分野でも、これからは国内でサポートしていく意向を表明している。

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