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» 2021年03月16日 10時00分 公開

BIM導入のメリットを検証する「大和ハウス工業チームの連携事業」Vol.3BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(15)(1/5 ページ)

2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は前回に続き、我々の連携事業の、施工段階移行の具体的な取り組みについて、説明を加える。

[伊藤久晴(大和ハウス工業 技術本部 建設デジタル推進部 次長),BUILT]

設計〜施工へのBIMデータ移行の4つのパターン

 設計のBIMデータを施工へと受渡しをする場合、いくつかのパターンが考えられる。

(1)設計からBIMデータの受渡しはなく、設計から渡された2次元の図面を基に、施工側がBIMデータを作る場合。当然ながら、設計BIMと施工BIMはつながっていない。

(2)設計から、IFCなどの中間フォーマットのBIMデータが提供されるが、Revitのデータ自体は渡されない場合。IFCデータを渡されても、そこから、BIMデータを作ることはできないので、納まりの確認が3次元でできる程度で、施工BIMデータの作成には使えないことが多い。

 現状、日本では、(1)か(2)のパターンが多い。なぜならば、設計と施工で使うソフトの違い、設計が作成したデータの権利やノウハウの問題、設計と施工(工事)でのBIM標準の相違などから、Revitのデータ自体を渡すことができないか、渡しても意味がないことが多々あるためだ。

設計から施工へのBIMデータ受渡しのパターン

(3)設計で作成したRevitデータを工事に渡すが、工事用のワークシェアリングを別途、新たに作って、設計のBIMデータをコピーし、工事用として活用する場合。この場合のデメリットは、設計のRevitデータと、工事のRevitデータがダブルスタンダード状態となり、設計がRevitで変更する修正作業を、工事側でも同じように修正するという手間が生じることである。確認申請でも起きる課題であるが、同時期に複数のRevitデータがあることが不整合を生む原因になる。

(4)設計で作成したRevitデータを、ワークシェアリングの環境ごとで工事に渡す場合。この際には、工事段階での設計変更にどのように対応するのかが課題となる。

 1つの考え方として、工事に引き継がれたRevitデータの設計上での変更内容は、ワークシェアリング上で設計が作業するということにすれば、Revitデータは1本化され、BIMデータの不整合は防げる。しかし、設計側と工事側がどちらも変更の権限を持っていると問題が発生するので、ワークシェアリングの機能で、工事側の変更を許す部分と許さない部分を設定しておくことなどが必要となるが、作業が煩雑になり、共通のルール化は難しい。

 効率的なBIMデータの受渡しとしては、(3)か(4)のパターンが相当する。やはり、施工側で1からデータを作ることは、作業時間や作業コストを考えると現実的ではないだろう。しかし、(3)か(4)では、設計側と施工側のBIM標準は、基本的に同じである必要があり、日本では当社とフジタのようなグループ会社でなければかなりハードルが上がる。日本での統一化されたBIM標準が必要な理由がここにもある。

 今回の連携事業では、意匠が(3)のパターン、構造と設備が(4)のパターンで実施した。仮想の事業ということで、工事中の設計変更は、検証のため意図的に発生させたものしかなかったので、連携において大きな支障は起きなかった。今後、実物件で発生する設計変更に対応するためには、どちらのパターンがよいのかを検討しなくてはならない。少なくとも(4)のパターンでは、施工段階での設計変更の煩雑さから、できるだけ設計が工事段階での変更を減らす方向に動くのではないかと期待できる。

クラウドワークシェアリングについて

 先ほど説明した(3)と(4)のパターンで使用した「クラウドワークシェアリング」について少し説明を加える。

 クラウドワークシェアリングとは、クラウド上にあるRevitデータを各チームの作業者のRevitと同期させ、同時に設計作業を進められる仕組みである。さらに、クラウド上で、他のチームのモデルともリンクさせることで、意匠・構造・設備が同時に最新データをリンクさせながら作業することが可能になる。これがライブリンクである。

クラウドワークシェアリングのイメージ

 この仕組みは、BIMにおける設計作業で必須と考えている。。BIMモデルを別々に作って、統合モデルを作った段階で干渉チェックなどをしたのでは、手戻りが多く実務的ではない。

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