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» 2021年03月29日 10時00分 公開

【最終回】日本のBIM先駆者が遺す「BIMの先にしか実現しないDXという未来」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(16)(1/3 ページ)

2020年の3月23日にこの連載が始まって、1年が経つ。第1回で、「なぜ日本のBIMはダメなのか?」というテーマでスタートし、今回の連載で16回目となる。この1年の節目で、一旦筆を置かせていただくことにする。第1回で、「なぜ日本のBIMはだめなのか?」と書いたのは、単にダメなことを指摘するということではなく、逆に、BIMを正しく認識し、本来あるべき道に進んで欲しいと願ったからである。この連載を書いた2020年という1年間で、国土交通省の建築BIM推進会議との連携事業や日本初のISO 19650-1,2の認証などに取り組み、その中で私なりのBIMのあるべき姿を実践できた。最終回では、前回書き残した連携事業での維持管理領域での取り組みと、BIMの先にある“DX”という未来について書いておく。

[伊藤久晴(大和ハウス工業 技術本部 建設デジタル推進部 次長),BUILT]

連携事業での維持フェーズの取り組み

 まとめに入る前に、前回までに触れていなかった連携事業での維持管理の取り組みについて少し説明を加える。

 設計・施工のBIMデータを維持管理に連携する方法については、実はISO 19650の中に記載している。ISO 19650では、EIR(情報交換要求事項)の中で、AIR(資産情報要求事項)の記載することになっているが、そのAIRによる納品データとして、AIM(資産情報モデル)の作成を要求している。

 この資産情報モデル(AIM)が維持管理システムと連動して、竣工後の維持管理運用のために使われるモデルとなる。

情報要求事項と情報モデル

 それぞれの要求事項や情報モデルについての説明はISOの規格を読んでもらいたい。今回の連携事業で、プロジェクト情報モデル(PIR)と資産情報モデル(AIR)そして維持管理システムとの関連について、どのように考えたかを説明しておく。

 ちなみに、上図の3つの情報要求事項と情報交換要求事項は、発注者が作成するもので、その指示に従って、設計・施工業者がプロジェクト情報モデル(PIM)を作り、維持管理モデル作成業者が資産情報モデル(AIM)を作成する。このプロジェクト情報モデル(PIM)というのが、設計・施工段階のBIMモデルである。

 これらの関係が下図となる。設計施工段階でのBIMモデル(PIM)を、維持管理に使える資産情報モデル(AIM)とするために、指導を行うのが、設計施工段階でのライフサイクルコンサルタントの役割である。さらに、維持管理・運用フェーズでは、この資産情報モデル(AIM)自体が、維持管理システムと連動して、ライフサイクルコンサルタントの指導の下に、維持管理・運用を行うという形となる。維持管理に必要な全ての情報を、Revitに入れることはできないので、AIMには追加情報としてのドキュメント類も含まれる。

連携事業でのAIMと維持管理・運用システム(Archibus)の関係

 AIMと維持管理・運用システムとの連携については、RevitとArchibusがモデル・情報ともに、ダイレクト連携し、追加情報も連携させることで、維持管理・運用システムの基本的な情報が受け渡される。維持管理・運用システムでは、AIRに従って発注者の要求する仕組みを構築し、仮稼働を経て、運用に至る。

 連携事業の成果としては、維持管理システム構築作業が30%削減され、引渡しから維持管理システムの運用開始までのリードタイムは8分の1に短縮できた。確かに、発注者から発注条件としてAIRで、維持管理に対する要求事項が明確にされ、ライフサイクルコンサルタントによって、設計・施工中でも、これらの配慮を行ってゆけば、こういった成果が出ることが判明したが、いくつかの課題も発見できている。

 1つは、PIMとAIMの連携における課題である。設計・施工用に作成したBIMモデルは、維持管理・運用には詳細すぎるモデルが多くあり、逆に維持管理に必要な情報が足りないことが起き得る。ArchibusにRevitを連携する際は、ファミリ自体の修正も必要となった。従って、維持管理・運用に利用するRevitのモデルを作るためには、設計・施工でのモデル作成基準自体を見直す必要があると感じた。

 維持管理・運用フェーズでの、RevitとArchibusの関係でも、技術的には双方向連携ができることはわかったが、竣工後の段階で、誰がどういったタイミングで資産情報モデル(AIM)であるRevitデータを修正するのかという役割の問題が生じてくる。竣工後、建物は増改築を繰り返して利用される。それに対するモデルや情報の変更と言った作業ができなければ、このシステムは使い物にならなくなってしまう。今回の連携事業は、仮想物件であったため、このような事態には陥らなかったが、今後は考えてゆかねばならない課題だろう。

 また、ライフサイクルコンサルタントは、維持管理・運用システムだけでなく、BIMソフトについても詳しい人材が要求される。日本では、現状、ライフサイクルコンサルタントができる人材が日本には、あまりいないといった問題もある。

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