自動車から撮影した画像は、損傷以外の道路状態を把握するのにも利用できます。雪が降ったり路面が凍結したりすれば、通行規制や除雪などの手配が必要になりますし、降雨で道路が冠水することもあります。下図左は降雨による冠水、右は積雪の状態を走行する自動車で撮影したものです。こうした画像を用いて、AIで路面の状態を分類する研究が進められています※3。
仮に道路を日々行き交う一般自動車を活用することで、詳細な降雨や降雪の状態や分布が分かれば、従来に比べてきめ細かい交通規制や対策を迅速に行えるようになります。当然ながら、天候や昼夜によって画像の明るさや色調など画像の特徴はかなり変動しますが、多くのデータを収集して学習することで、AIの汎用性が高められます。
また、走行時に撮影した画像のみならず、道路監視用のライブカメラなどの固定カメラを利用して、画像から気象条件や路面状態を把握することも可能です。定点での観測になりますので、周囲の条件などが一定ですから、より高い精度で判定できる可能性があります。ライブカメラ画像にAIによる回帰を適用して、積雪深を求める研究も報告されています※4。
道路の安全な走行のためには、道路側の状態だけではなく、自動車側の状態も重要です。例えば降雪時には、適切なタイヤを装着する必要があります。下図は、スタッドレスタイヤを装着しているかどうかを画像から判定するAIです。こうしたAIを導入することで、従来人手で行っていた降雪時や凍結時に通行規制をかけるかどうかの判断が効率化されています※5。
道路の安全性や利用に関わる問題は、身近でかつニーズが明確であり、画像が撮影しやすいこともあって、AIによる画像判定が活発に開発されており、実務への導入も進みつつあります。道路の延長も膨大ですし、自動車の総数も多いですから、AIによる効率化の効果は大きいと考えられ、DXの対象としても有望です。
今後、自動運転などの技術の進展によって、自動車に搭載されるセンサーも多様化し、ネットワーク化することで、得られるデータも質・量ともに増大していくでしょう。そのため、これまでにないアイデアやユースケースが創出され、将来にわたる発展が期待される領域といえます。
★連載バックナンバー:
『“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト』
■第4回:コンクリ構造物のひび割れAI点検で精度を上げるには?段階的手法の有効性
■第3回:AIを土木へ活用していくための3つの応用法、現場業務DXまでの道のり
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