大林組がシールド機の進む方向をAIで自動制御するシステムを開発:山岳トンネル工事
大林組は、開発を進めるシールド自動化システム「大林インテリジェントシールド(Obayashi Intelligent Shield、OGEN)」の要素技術として、シールドAI自動方向制御システムを開発した。シールドAI自動方向制御システムは、シールド自動測量システム「OGENTS/SURVEY」や「シールド三次元線形管理システム」と連携することで、測量結果をもとにした修正計画の立案、指示、シールド機の運転操作といった一連の作業を自動化したシールド自動運転「OGENTS/DRIVE」として運用することができる。今後、シールド工事に関わるその他の自動化システムを実現および統合し、OGENの早期完成を目指す。
大林組は、AIが掘進実績を学習することで、シールド機の進む方向を制御するシールドAI自動方向制御システムを開発したことを2021年3月22日に発表した。
シールド工法では、シールド機が機内の後方部で組み立てたセグメントリングを反力にして、シールドジャッキを伸ばして進む。そして、リング状に複数配置したシールドジャッキのどれを伸ばすかを選択し、シールド機に作用する力点を変えることで方向を制御する。
シールド機による地山の掘削イメージ 出典:大林組
しかし、周辺地盤の硬さなどさまざまな要因が進む方向に影響を与えるため、状況に応じて適宜力点を調整する必要がある。また、方向を誤ることでシールド機とセグメントリングとの間にある隙間(クリアランス)の広さが不足すると、セグメントリングに無理な力がかかり、ひび割れが発生してしまう。解決策として、力点の調整作業では、オペレーターがシールド機の向きや位置、機械負荷など、多くのデータを総合的に評価しつつ方向修正に必要な力点を判定している。
こういった課題を解消するために、大林組はシールドAI自動方向制御システムを開発した。AI自動方向制御システムは、オペレーターが評価に用いる多種多様なデータをAIが学習することで、シールド機の方向修正に必要な力点を自動で判定し、伸ばすべきシールドジャッキを選択する。シールド機の方向修正を行う上で重要な力点を的確に判定するめ、オペレーターの技能に左右されることなく、計画線に沿ったトンネルを構築できる。加えて、セグメントリングに無理な力をかけることなく施工するため、品質の確保が図れる。
AI自動方向制御システムによる方向修正におけるシールドジャッキの操作例 出典:大林組
また、クリアランスの大きさも考慮して力点を判定するため、クリアランス不足によりシールド機とセグメントリングが接触し、無理な力が生じる方向制御を防ぐ。これにより、セグメントリングのひび割れや漏水が発生するリスクを低減し、トンネルの質を確保する。さらに、シールド機の形式や大きさ、形状、シールドジャッキの本数、製作メーカーにかかわらず、全てのシールド機に搭載可能な他、あらゆる掘削延長や土質にも対応しているため、さまざまなシールド工事への適用に応じている。これまで5台のシールド機に適用し、オペレーターと同様の判断をすることを確認した。
AI自動方向制御システムの適用状況 出典:大林組
- 立杭不要で何度でも安全にシールドマシンのビット交換が可能な新工法、大成建設ら
大成建設は、日立造船と共同で、シールドマシンの口径に関係なく、マシン内部から可動式マンホールとスライド式交換装置を用いて、ビットを取り換えられる「THESEUS工法」を開発した。新工法は、ビット交換用の立坑を新たに構築する必要がなくなるため、周辺環境への影響を軽減する他、何度でも効率よく安全にビット交換が可能。今後、両社は、新工法を長距離シールド工事に導入する方針を示している。
- シールドの掘進と内部への部材設置を同時に行える新工法を開発、鹿島建設
鹿島建設は、セグメントによる1次覆工完了後にトンネル内部に構築する構造物の部材をプレキャスト化するとともに、各部材を床版の上下で分けて搬送することで、シールドの掘進と内部への部材設置を同時に行える新工法を開発し、都内で手掛けている「東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)東名北工事」に適用した。
- 「凍結しない加泥材」で、シールドマシンのビット交換の作業量を半減
大成建設は、トンネル工事で強制的に土中の間隙水を凍らせ、確実に地盤を固める施工で、凍結しない加泥材を使ってシールドマシンのビットを交換する新工法を開発した。
- 分割型PCa覆工システムが施工性向上、従来比で覆工体の構築期間を約7割短縮
清水建設は、シールド工事に用いるセグメントタイプのPCa部材で覆工体を構築する「分割型PCa覆工システム」の実用化を目指し、実証実験を進めている。2019年8月には、覆工体が形状を維持して自立することを確かめ、2020年7月には覆工体が十分な耐力を備えていることを実物大の覆工体を用いて明らかにした。このほど、システムの構築にエレクターと形状保持装置を採用した新システムの施工性を実証実験で検証した。
- 揺れを最大34%抑える新シールド工法、マシンに逆位相の振動を与えて低減
大林組は、シールドトンネル工事で、周辺に影響を与えるマシンの振動を強制的に逆位相の揺れを発生させて打ち消す新工法を開発した。実現場への適用では、34%の揺れを抑えることが実現したという。
- シールドトンネル工事の人的ミスによるセグメントの入れ替えをゼロにした鹿島の新物流システム
敷地をフル活用した建物の建設現場では、資材などを置く用地がほとんどないため、資材などの搬出入に手間がかかっている。こういった現場では、作業内容に合わせて、材料などを日時指定して搬出入するため、多くの煩雑(はんざつ)な業務が生じている。複雑なワークフローにより、ヒューマンエラーが発生し、工期が遅れることも珍しくないという。鹿島建設はこういった状況を打開するため、新物流システムを構築した。
- 余掘り量を3D表示、大林組のシールド自動化システム
大林組は、総合的なシールド自動化システム「大林インテリジェントシールド(OGENTS)」の早期実現を目指す一環として、シールド3次元線形管理システムを開発した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.