大成建設は、日立造船と共同で、シールドマシンの口径に関係なく、マシン内部から可動式マンホールとスライド式交換装置を用いて、ビットを取り換えられる「THESEUS工法」を開発した。新工法は、ビット交換用の立坑を新たに構築する必要がなくなるため、周辺環境への影響を軽減する他、何度でも効率よく安全にビット交換が可能。今後、両社は、新工法を長距離シールド工事に導入する方針を示している。
大成建設は、日立造船と共同で、シールドマシンの口径に関係なく、マシン内部から可動式マンホールとスライド式交換装置を用いて、ビットを取り換えられる「THESEUS(Taisei-Hitz Easy and Speedy bitExchange Unit Systems)工法」を開発したことを2021年2月22日に発表した。
通常、シールドマシン先端部のカッターヘッドに設置された先行ビット※1は、摩耗が激しく、長距離掘進や硬質地盤、大きな玉石を含む砂礫地盤を掘進する場合には、施工途中でビット交換作業が必要となる。これまでは、地上から対象エリアまでビット交換用の立坑を掘り、カッターヘッドを露出させる方法で交換作業を行っていたが、トンネル路線は幹線道路下に計画されていることが多いため、立坑工事に伴う交通渋滞や騒音の発生などが課題となっていた。
※1 先行ビット:地山の先行掘削を行うビットで、最初に地山に接触するため摩耗が激しく、カッターヘッドの外側になるほど摺動距離(カッターが地山と接して移動する距離)が長くなり、摩耗量が増加する
また、外径9メートルを超える大口径シールドマシンでは、先行ビットを取り付けているカッタースポーク内に作業空間を設けて、直接人が出入りして交換することが可能だが、外径3メートル程度の小口径シールドマシンでは、同様の方法を用いることは技術的に難しく、ビット交換用の立坑を配置しなければならなかった。
そこで、大成建設と日立造船は、あらゆる口径のシールドマシンを対象に立坑を設けることなく、効率的かつ安全に何度でもビット交換ができるTHESEUS工法を開発した。
THESEUS工法は、カッターヘッドを回転させ、1基の可動式マンホールを用いることで、全スポークに出入りすることを可能とし、シールドマシンの口径に関係なく、交換対象となる外周側に配置された全ての先行ビットを取り換えられる。
可動式マンホールとスポーク背面の接合箇所は、印籠継手※2のかみ合わせ効果により、地下数十メートルの水圧が作用する条件下でも止水性を確保する。さらに、可動式マンホールとスポーク内空間は上記の継手構造でしっかり連結されるため、大気圧下の作業空間で安全にビットを取り換えられる。
※2 印籠継手:管などの接合に使用する継手で、片方の接合面に出っ張りを他方に受口を設けて隙間なく接続する方式
両社は、THESEUS工法の性能を確かめるために可動式マンホールを用いた実大モデルによる実証実験を実施した。結果、マンホールを介して内部に比較的広い作業空間を構築し、シャッタースライド機構を採用することで、旧ビットの引き込みから新ビットの装着までにかかる時間が1個あたり20分以内に収まることを確認した。
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