大成建設は、トンネル工事で強制的に土中の間隙水を凍らせ、確実に地盤を固める施工で、凍結しない加泥材を使ってシールドマシンのビットを交換する新工法を開発した。
大成建設は、富士化学、精研と共同で、大深度におけるトンネル工事で凍結工法を用いて施工する際、「凍結しない加泥材」を用いたシールドマシンのビット交換手法を開発し、名古屋市上下水道局が発注する「名古屋中央雨水幹線下水道築造工事(その2)」に適用して、ビット交換作業を安全かつ効率的に行った。
これまでシールドトンネル工事では、施工中にシールドマシンのビット交換作業を実施する際、適用実績が多く信頼性の高い凍結工法を採用し、切羽部及びシールドマシン外周部の地盤を凍結させてから交換に移っていた。しかし、この工法ではシールドマシンの面板が周辺地盤と強固に凍着してしまうため、面板前面・側部の凍着部をすべて人力で斫(はつ)り、面板直径と同等の大きさで奥行1メートル程度の作業空間を構築してから、ビット交換を行う必要があり、多大な労力と時間を要していた。
3社は新たに開発した「凍結しない加泥材」をあらかじめ面板前面に注入することで、面板と凍結地盤との凍着を防いだビット交換手法を開発。実際のシールドトンネル工事への適用により、大深度での凍結条件下で、安全かつ効率的にビット交換が実施できることを確認した。
新ビット交換手法では、「凍結しない加泥材」が掘削土と攪拌(かくはん)され、面板前面と凍結地盤の凍着が防げるため、凍結地盤内でシールドマシンの面板の回転が可能となり、凍土の掘削範囲を最小化する。従来のような面板前面に大きな作業空間を構築する斫り作業が不要となる。
面板上半部の作業空間の構築により、凍結地盤の掘削量を2分の1に減らせ、凍土の掘削期間も半減されることから、狭隘(きょうあい)で低温となっている空間内での掘削作業を半分にすることができる。
また、面板を半周回転させた状態でのビット交換となるため、従来の面板前面での支保工を用いた足場が不要となり、面板上半分の必要最小限の作業空間内で、安全で効率的な交換作業が行える。
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