近畿圏では、大型マルチテナント型物流施設の空室率が1.9%で、対前期比で1.8%低下した。近畿圏で空室率が2%を下回るのは2016年の第2四半期以来だ。しかし、今期は、竣工した物流施設2棟のうち1棟が満床稼働した他、湾岸部で既存物件の空室消化が進んだ。
向こう2四半期の供給予定物件は、複数の物流施設で1棟借りが内定しており、空室は低い状態が続く見通し。だが、コロナ禍の影響で業績が低迷している企業もあり、既存物件で空室や転貸区画の募集が出てきている。さらに、内陸部といえどもリーシングの進捗ペースは落ちてきており、今後は物件の競争力で稼働率に格差が生じると予想されている。
実質賃料は1坪当たり4020円で対前期比横ばいとなった。要因は、過去2年間で賃料が13%アップしていることや業績への不安を理由にテナントが新規契約に慎重になっており、賃料の上昇が抑えられたためだ。
中部圏では、大型マルチテナント型物流施設の空室率が1.7%の8.6%となった。空室率がダウンした主因は、新規供給がなく、前期竣工の物件で空室の一部が消化されたためだ。このエリアでは現在、移転元のスペースも後継ぎのテナントが決まるなど入居に動きが見られる他、2022年に約56万1983平方メートルの大量供給を控えているため、オーナー側のテナント誘致活動も活発になっている。実質賃料は1坪当たり3590円となり、4四半期連続で対前期比横ばいとなった。
福岡圏では、大型マルチテナント型物流施設の空室率が2019年の2四半期以降0%が続いている。今期は鳥栖地域の新規供給1棟が満床で竣工。2021年は2棟の供給が予定されているがいずれも既に1棟借りで満床となっている。
これまで、福岡圏では、大型物流施設の供給が少なく、倉庫スペースが不足していたため、新規物件が竣工しても、需給バランスは逼迫したままだ。従って、まとまった倉庫を必要とする企業は、新規物流施設の開発計画で貸借を検討している。加えて、大型マルチテナント型物流施設の開発が増える中で、より使いやすい構造の施設が評価を上げている。今期の実質賃料は1坪当たり3170円で、対前期比プラス0.6%となった。
その他の地域では、いくつかの大型マルチテナント型物流施設で、テナントの決定もしくは内定が進んだ。さらに、高速道路への交通利便性に優れ、住宅地に近い物流施設の開発計画は大手企業が早い段階から入居の検討を開始する例がみられた。また、空室不足感が強い地域では、賃料水準が見直されつつある。特に北海道の札幌市周辺は、従来他の都市と比べて賃料水準が低かったこともあり、今後は賃料が一段と上がっていくと予想されている。
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