最新のFMに触れる、そして学ぶ方法(下)−資格試験を受ける。部会活動に参加する−いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(10):(1/3 ページ)

本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、会場を用意して開催していたこれまでのファシリティマネジメントフォーラムと、今回初の試みとなったオンライン版との比較、さらに認定ファシリティマネジャー資格の有用性を解説する。

» 2021年03月12日 10時00分 公開

Webセミナーに参加しましたか?

 コロナ禍で、Web開催によるセミナーが花盛りだ。前回も紹介したが、当協会でも、「第15回 日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメントフォーラム 2021)」を2021年2月17日〜2021年3月1日、当初の予定を2日間延長して開催した。2020年までのファシリティマネジメントフォーラムは毎年2月に実空間の会場で催していたが、今回はファシリティマネジメントフォーラム 2021はコロナ禍の影響を踏まえ、完全なWeb開催とした。

 会期中の2021年2月17日〜2021年2月19日の3日間はリアルタイムのライブで配信し、その後、2021年2月22日〜2021年3月1日の7日間は事前収録した動画をオンデマンド方式で展開した。70近いセッションを聴講した視聴者は、延べ1万人にも及んだ。また、オンライン開催を初めて試みたことで、主催者側の立場で実空間での開催との違いにも気付いた。

ファシリティマネジメントフォーラム 2021案内パンフレット(1)
ファシリティマネジメントフォーラム 2021案内パンフレット(2)

 ファシリティマネジメントフォーラム 2021のテーマは「ニューノーマル時代の経営とファシリティマネジメント」だったが、聴講者はまさに参加方法からニューノーマルを体験することになった。具体的には、Web上での申し込みや参加費のカード決済、視聴方法などだ。それらの操作に慣れている人は問題なく各講演を視聴できたが、不慣れな人には、会場に足を運べば聞けた講演とは異なり、視聴するための操作でストレスを溜めることになったのではと危惧している。運営側もオンライン開催は初体験だったため、コールセンターのサポートなども頼りにしながら対応し、なんとか無事に終了することができた。

 上記のような出来事を経て、体感したオンライン開催のメリットを紹介する。まず、今までは参加者の居住地が東京中心だったが、全国からの参加者が増えたことだ。もう1つの利点に関して、ファシリティマネジメントフォーラムは、かつて並行して7会場で同時講演していたので、聴講者にとっては聴講が難しい講演もあったが、ファシリティマネジメントフォーラム 2021では、オンデマンド配信により、全ての講演を必要な部分だけ何度も見られるため、参加者がさまざまな講演を聞くのが容易になった。

 しかし、デメリットとしては、一般的なセミナーとは異なり、講師には参加者が見えず、一方的な講演になることが挙げられる。チャットなどの利用で、講師と参加者は多かれ少なかれ双方向でコミュニケーションをとれるが、視聴者同士のコミュニケーションは困難だ。こういった問題は、関係者が多く集まり、そこでの出会いを楽しむフォーラムの長所を損なってしまうと痛感している。さまざまな出会いがあることは、実空間における講演の楽しさと良さだ。だが、コロナ禍が収束しても、Webの快適性向上と活用はさらに進むと見込んでいる。しかし、実空間でのフォーラムも価値が再確認され、フォーラムの在り方はハイブリッド化するだろう。

 ファシリティマネジメントフォーラムのように、今回のコロナ禍で、働き方をはじめ多くのことが強制的に変革され、ニューノーマルに順応することとなった。これらにどう向き合うか悩むことも多々あるが、このような激変の時代には、あまり考え過ぎず、まず体験することが大事なのではないかと思う。身をもっての体験の弁だ。

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