ファシリティマネジメントフォーラムなどに参加し、FMに関するさまざまな最新情報を知ることは大切なことだが、それらを分析し理解するには、基礎知識が必要だ。FMの基礎知識を体系的にまとめた書籍には「公式ガイド ファシリティマネジメント」(2018/日本経済新聞出版)がある。公式ガイド ファシリティマネジメントは、FMの教養を学ぶのにも使えるが、FM資格「認定ファシリティマネジャー資格」の試験に向けた教科書でもあるため、認定ファシリティマネジャー資格の試験合格といった目標を持って読むのがより効果的だ。
いきなり400ページを超える公式ガイド ファシリティマネジメントを読む時間が取れない人には、FMの入門書「第四の経営基盤―日本企業が見過ごしてきたファシリティマネジメント」(2013/日本ファシリティマネジメント協会)を薦める。
認定ファシリティマネジャーの資格試験と公式ガイドファシリティマネジメントについては、連載の第3回と第8回で説明しているので詳細は省くが、認定ファシリティマネジャーの資格に関しては試験方法が2021年度から変わり、新方式になるのでその概要を紹介する。
認定ファシリティマネジャーの試験では、ファシリティマネジャーとしての基本的素養を確認するため、FMに関連する知識と業務への理解や技術力を確かめるためのテストと論述が行われる。
いままでは、全国9会場での筆記試験だったが、2021年度よりCBT(Computer Based Testing)方式を用いたテストに変更される。CBT試験とは、インターネット上から受験日時とテストセンターを予約し、テストセンターのPCを使用して受験する試験のことだ。この試験方式では、モニターに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答する。CBT試験のテストセンターは全国約280カ所に配置され、事前に予約をすれば受験者が受けやすい場所で受けられる。
そのため、今回の新型コロナウイルス感染症対策や地震・台風などの自然災害対策に左右されることが無く、身近な会場で受けられ、受験日に幅があり受験しやすいため、ぜひこの機会に活用してほしい。CBT方式は、日本では英語検定や漢字検定などで広く採用されているが、米国の建築家登録試験と国際ファシリティマネジメント協会(IFMA)の試験にも導入されている。2021年における認定ファシリティマネジャー資格試験の申し込みから資格取得までの日程と概要は以下の通りだ。
【2021年における認定ファシリティマネジャー資格試験の概要】
認定ファシリティマネジャー資格は、発注者となる総務部などにいるファシリティマネジャーが取得していることが多いため、建築の専門家が、発注者が何を考えているかを把握するのに役立つ。一級建築士の資格が建築分野を深堀りした資格であるとすると、認定ファシリティマネジャー資格は発注者として幅広いファシリティの知識を得る資格だ。建築関係者が認定ファシリティマネジャーの資格を保有していると、発注者や利用者の立場に立てる人で、気持ちが分かる人という評価も得られる。地方公共団体や民間企業では、発注先を選定するコンペティションとプロポーザル時に認定ファシリティマネジャーの保有人数を問うケースなども増えてきている。
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