先端力学シミュレーション研究所の大川氏は、「ドローンのプロペラ開発に取り組んだ契機は自立制御の技術開発を目的に、市販の産業用ドローンを購入したことだ。産業用ドローンを分析してみると、当社が、自動車分野でカーボン製のパーツなどを設計開発してきたノウハウを生かして、ドローン用のプロペラを製造できることが分かり、開発に踏み切った。当社はシミュレーションソフトウェアメーカーなため、プロペラの設計では、当社製シミュレーションソフトを活用した。シミュレーションソフトでプロペラの材料について検討した結果、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を素材に使用すると、軽量高強度のプロペラが作れることが明らかになった」と解説した。
また、「シミュレーションソフトで、プロペラの3Dモデリングや流体解析を行い仮想的に性能を評価した後、試作品を作成することで、既存製品よりもトルクの負荷を減らせた。試作品のCFRP製プロペラは最終的に、スペックを確かめる目的で、ドローンに搭載してテスト飛行させるが、実測値とシミュレーションソフトで事前に算出した値の差は少ない。現在、CFRP製プロペラの試作技術が確立し、特許を出願している他、金型も保有しているため、CFRP製プロペラの量産化も進められる。利用者の要望に合わせて、静音化仕様やハニカム構造などのCFRP製プロペラも提供できるようになっている」と話す。
川本重工の大原氏は、MDFマグネシウム合金について解説した。MDFマグネシウム合金は、市販マグネシウム合金にDRF(変形拘束高負荷鍛造)法を施すことで製造でき、引っ張り強度は一般的なマグネシウムの約2倍に相当する。DRF法は、豊橋技術科学大学の研究グループと川本重工が共同開発した技術で、従来の「多軸鍛造法」と比べて簡単な作業手順で作れ、板材や異形状材のマグネシウムにも適用可能。
「MDFマグネシウム合金は、重さは1立方メートルあたり1.8グラムと軽く、希土類添加型マグネシウム合金を超える強度で、価格は希土類添加型マグネシウム合金の5分の1だ。また、振動を吸収する特性があるため、ドローンの筐体だけでなく、モーター用ブランケットの素材にも適してる」(大原氏)。
川本重工と豊橋技術科学大学の研究グループは、さらに低価格化が望めるDRF改法を既に開発しており、DRF改法と量産化で、最終的には1キロあたり1万円でDRFマグネシウムを販売できると見込んでいる。川本重工では、開発したDRFマグネシウム棒のサンプル出荷を2020年度中に開始する見込みだ。
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