関西電力は、自律制御システム研究所製の産業ドローン「ACSL-PF2」をカスタマイズして煙突点検用ドローンを開発した。同社が、KANSOテクノスやNJSと共同で行った火力発電所での実証実験では、煙突内部で自律飛行により高度175メートルまで上昇し、点検用の画像を取得可能なことが明らかになっている。
自律制御システム研究所(ACSL)は、建設分野のドローンが集結する国際展「Japan Drone2020|第5回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2020年9月29〜30日、幕張メッセ)に出展し、関西電力がACSL製の産業ドローン「ACSL-PF2」をカスタマイズして開発した煙突点検用ドローンを紹介した。
関西電力が管理する火力発電所には、高さ約200メートルの煙突が備わっている。煙突の劣化を早期に検知するため、これまでは、ゴンドラを内部に設置し、作業員がゴンドラを使用して、目視で点検していた。しかし、従来の点検方法は、高所作業のため落下の危険性や数週間の時間がかかるといった課題があった。
解決策として、関西電力は煙突内部を自律飛行しながら撮影できる煙突点検用ドローンを開発した。煙突点検用ドローンは、非GPS環境下の煙突内で、自己位置の推定を行うために、レーザーを用いた検知と測距の技術「LiDAR(Light Detection and Ranging)」を採用。LiDARのレーザーにより、暗所でも対象物の形状把握が可能な利点を生かし、煙突点検用ドローンでは、レーザーを水平方向に照射して、煙突内壁とドローンの距離を算出し、常にドローンが煙突の中心に位置するように制御している。
また、ドローンに方位を識別させるために、煙突の底面に配置したLEDテープライトをドローンに搭載したカメラで読み取らせ、方位の変化を認識させている。LiDARによる機体制御とLEDライトを利用した方位検出で、高さ100メートル以上の煙突内でも安定した飛行を実現している。ドローンに取り付けられた高輝度LEDライトや6000万画素の画像が取得できるカメラで、煙突内のような暗い環境でも、内壁や微細なクラックの鮮明な画像が得られる。
煙突点検用ドローンを活用することで、高所での作業が無くなり、安全性が向上し、煙突点検1回あたりの点検期間もこれまでと比較して約90%短縮できる。さらに、点検作業員が少なくて済むをため、関西電力では従来比で、50%以上のコスト改善を見込んでいる。
煙突点検用ドローンの性能を確かめるために、関西電力がKANSOテクノスやNJSと共同で行った火力発電所での実証実験では、煙突内部の自律飛行で高度175メートルまで上昇し、点検用の画像を取得した。
機体のベースとなっているACSL-PF2は、アームとボディーを一体成型することで、強度や防じん性、防水性能を高めたドローンで、誤作動が発生しても安全に制御する「フェイルセーフ機能」や緊急時にドローンを自動で帰還させる「Go Home機能」を備えている。ACSL-PF2の全長は1173ミリで、高さは526ミリ。飛行速度は、水平で秒速10メートル、上昇で秒速3メートル、下降で秒速2メートル。
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