50キロの荷物を積んでもドローンを1時間飛ばせるエンジンJapan Drone2020(1/3 ページ)

エアロディベロップジャパンは、1キロあたり1キロワットの出力を備えたハイブリッドエンジン「ハルバッハエンジン」を開発した。ハルバッハエンジンを1基搭載したドローンは50キロの荷物を積載しても1時間以上飛行できる。

» 2020年11月05日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、建設分野のドローンが集結する国際展「Japan Drone2020|第5回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2020年9月29〜30日、幕張メッセ)で、トークセッション「ドローントップテクノロジー 〜注目される次世代テクノロジーの真髄に迫る」を開催した。

 セッションでは、JUIDA 副理事長 千田泰弘氏がモデレーターを務め、エアロディベロップジャパン(ADJ)代表取締役 田邉敏憲氏や早稲田大学 理工学術院総合研究所 客員教授 大内茂人氏、先端力学シミュレーション研究所 取締役 新事業創造部長 大川由夫氏、川本重工株式会社 営業顧問 大原健治氏が順にオンラインで登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。

1キロあたり1キロワットの出力を持つハルバッハエンジン

JUIDA 副理事長 千田泰弘氏

 ADJの田邉氏は、「2018年にJUIDAの仙田副理事長に出会い、仙田副理事長から“日本のドローン開発は、先進国の中でも遅れているが、大型ドローンのハイブリッドエンジン開発なら先進国でトップになれる可能性がある”と聞き、大型ドローン用ハイブリッドエンジンの開発をミッションに掲げ、エアロディベロップジャパンを2018年に創業した」と起業の経緯を振り返った。

 続けて、「現在、長時間の駆動と重量物の運搬を両立したドローン実現の障壁となっているのが、高出力のドローン用エンジンが市場にないことだ。大半のドローンがリチウムイオン電池を動力源として積んでいるが、リチウムイオン電池は重さ1キロあたり0.2キロワットの出力しか備えていない。そこで、大型ドローンに必要とされる重さ1キロあたり1キロワットの出力を持つハイブリッドエンジン“ハルバッハエンジン”を開発した」と語った。

ハルバッハ発電機 出典:「Technical Journal of Advanced Mobility」(2020/JUIDA)

 ハルバッハエンジンは、ハルバッハ発電機とガスタービンエンジンで構成され、ハルバッハ発電機とガスタービンエンジンの製造と接続の技術はADJの独自技術で、ハルバッハ発電機のコアテクノロジーはADJに所属する工学院大学 電気工学科 教授 森下明平氏が特許を出願している。

「ギャップ」の構築で必要な複数の永久磁石の配置 出典:「Technical Journal of Advanced Mobility」(2020/JUIDA)

 「ハルバッハ発電機は、複数の永久磁石をS極とN極が上下逆になるように、交互に並べた列を2列作ることで、両列の間にできる空間“ギャップ”を利用する。ギャップは、磁束密度が2倍になるエリアで、ハルバッハ発電機に搭載する際には、発電機の内側と外側に複数の永久磁石をS極とN極が上下逆になるように並べた列を配置し、間にコイルを組み込み発電量を2倍にしている。また、従来エンジンで必要だった重い鉄心が不要になるため、ドローンの重さをこれまでと比べて約3割軽くできる」(田邉氏)。

ハルバッハ発電機での「ギャップ」構築のイメージ 出典:「Technical Journal of Advanced Mobility」(2020/JUIDA)

 30キロワットのハルバッハエンジンをADJ製のドローンに搭載した場合、50キロのペイロードを積載しても1時間のフライトが可能で、30キロワットのハルバッハエンジン3基をドローンに装着すれば、200キロ以上のペイロードを積んでも1時間以上の飛行を実現する。

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