長距離・長時間の飛行を可能にする固定翼ドローンがここ数年、国内の展示会でも出展されるようになり、各社のブースを賑わせている。しかし、固定翼機は、離着陸に平地の滑走路を必要とする機体が多く、運用上の弱点となっていた。
航空宇宙技術を応用してドローンの機体開発を進めているスペースエンターテインメントラボラトリーは、ドローンの機体や各種サービスが集結する国際展「Japan Drone2020|第5回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2020年9月29〜30日、幕張メッセ)の大型ドローンゾーンで、飛行艇ドローン「HAMADORI」のプロトタイプを披露した。
2014年に創業したスペースエンターテインメントラボラトリーは、ドローンや成層圏気球、小型衛星を対象に、サービスの企画から、機体開発、システム構築、運用までを一貫して行っている。
今展で出品した飛行艇ドローンのHAMADORIは、製品コンセプトに水上での離着陸を盛り込み、2021年夏の発売を目標にテストを重ねている。
一般的に、長距離を飛行するタイプのドローンは、滑走路が不可欠だが、開けた平地が限られる日本では運用場所が限定されてしまう。飛行艇のように水上での発着ができれば、構造物やビルなどに遮られることもなく、国内に数多ある海や河川、湖などの水域を活用することで、固定翼機の弱点を克服し、ドローンの利用範囲も一段と広がる。
HAMADORIの操作方法は、水上に機体を浮かべ、PC上で座標を設定すれば、自動で飛び立つ。完全自律制御のため、操縦の必要が無く、フライトプランに沿って飛行する。航続時間は現段階では1.5時間ほどだが、製品化の際には最大2時間になるという。巡航速度は時速72キロで、理論上は100キロの長距離をフライトすることが可能だが、通信エリアの制約を受けるため、現実には数十キロでの運用が想定されている。
機体は、洋上での運用を前提としているため、完全防水かつ堅牢な構造で、海水や潮風に伴う劣化を防ぐために水で丸洗いしても水漏れすることも無い。サイズは翼幅(全幅)が3100ミリ、全長は2000ミリで、重さは2人で持ち運べる18キロ。
主な活躍の場としては、災害や海難事故の救助をはじめ、インフラ監視、魚群探知、海洋調査など。ペイロード(最大積載量)は最大2キロで、高画質カメラやサーマルカメラの他、スペースエンターテインメントラボラトリーでは上空から農地の状態を把握するのに用いているマルチスペクトルカメラ、魚群探知機などを搭載すれば、地表や水面だけでなく、水中もカバーするより幅広い用途での活用が見込める。
また、米グアム島にNTTドコモが設置した5G技術検証環境「ドコモ5Gオープンラボ」で2019年12月に、日鉄ソリューションズが実施した実証実験では、HAMADORIで5G通信での飛行やデータ取得に成功。これまで海上での調査は、船舶が主流だったが、5G通信とドローンで、広範な海域を一度に短時間で調べることも実現する。
スペースエンターテインメントラボラトリーの担当者は「海外でも水上での離着を実現したドローンはまだ珍しい存在。製品化すれば、メイドインジャパンの機体でグローバル市場でも先行できる」と期待を語った。
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