国内に目を向けると、1987年に「日本ファシリティマネジメント協会(JFMA、現・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)が任意団体として発足。1996年9月には、組織を社団法人化すると同時に、FMの教科書を編纂(へんさん)し、認定ファシリティマネジャー資格制度を立ち上げた。
その後、「日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)」や「日本ファシリティマネジメント大会(FMフォーラム)」といった各種セミナーやイベントを主催している。さらに、2012年1月には、公益社団法人へと移行もした。
日本のFMの創成期である1980年代後半から、JFMAでは、毎年米国にFM調査団を送り、貪欲に米国のFMを学び、取り入れてきた。興味深いのは、JFMAが、デルファイ研究所の協力のもと1989〜1993年の5年間、米・マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、FM教育用カリキュラム・教材研究開発として行った「JFMA-MIT FMサマースクール」である。
MITのFMシステム事務所長・Kreon Cyros氏と建築学科教授・Michael Joroff氏が中心となり、夏の1カ月間、日本から10数人の受講者を受け入れ、MITのドミトリーに宿泊、朝から晩まですばらしい教授陣による授業と実践例の紹介などのFM教育を実に親身になって行ってくれたのである。その内容は、先進的で充実したものであり、実に、敬意を表すべきものであった。
当時MITでは、先行して「CAFM(Computer Aided Facility Management)」※2ソフトの“INSITE”を利用しており、授業でもCAFMのシステム紹介、さらに企業訪問でもCAFMの事例紹介があった。
※2 CAFM:FM業務を支援するソフトウェアの総称/JFMA解説ページへのリンク
1980年代後半の日本では、CADの概念は理解していても、CAFMの概念は一般的ではなく、ある銀行訪問時に、CAFMで自らの施設をマネジメントしているのを見せられ、訪問者の1人が後日「某銀行では、CADで図面を書いていた!?」などとジョークとも言えない話もあった。訪問者が建築関係者でもあり、その頃日本でのFMの理解は、建築のハード的視点が強く、経営的視点が弱く、FMが発注者側の業務であることが十分に理解できていなかった。しかし、まさに、貪欲に米国のFMを取り入れようとしているハングリーな時代に差し掛かっており、これらが基礎となり、今の日本のFMがあるといっても過言ではない。
近年では、CAFMもFM関係者には一般的になり、建物の管理的側面だけではなく経営情報と統合化したシステムをはじめ、クラウドシステム、BIM(Building Information Modelling)を活用するシステムなどの事例も見られる。国土交通省でも、建設時だけでなく、建築物のライフサイクルを通したBIMの活用を進めるべく、建築BIM推進会議(委員長:松村秀一、東京大学大学院工学系研究科 特任教授)にて、「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン」を2020年3月に発行している(これらに関しては、後日報告したい)。
次回、第3回では、「FMを学ぶためには」をテーマに解説してゆく。
【引用文献】「ファシリティマネジメントの実際」−施設を活かす総合戦略−(1991年/丸善)、「公式ガイド ファシリティマネジメント」(2018年/日本経済新聞出版社)
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