ここ最近では2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」以降、国内の企業でも、テレワークやフリーアドレス制、ABW(Activity Based Working)など、働き方そのものや働く場所に変化の兆しが見られる。建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」は、東京・代々木上原の事務所に誰もが足を運べ、多忙なワーカーの食生活を改善する「社食堂」を併設している。LINEやAirbnbなど、先進的なオフィス空間の設計も手掛けている設計事務所が考える働き方改革のアプローチをインタビューから探った。
東京国際家具見本市(IFFT)を出自とする「IFFT/インテリア ライフスタイル リビング」(会期:2019年11月20〜22日、東京ビッグサイト)。日本の家具3大生産地「旭川」「飛騨」「静岡」の製品をはじめ、テキスタイル、デザイン雑貨といった生活空間を構成する多彩な商材が一堂に会する。会期中の東京ビッグサイトには、設計者やデザイナー、内装・ディスプレイの施工会社、飲食・小売業者が多数会場に訪れ、インテリアの可能性を追求する場となる。
今回は新たな試みとして、見本市のディレクターに、広島と東京にオフィスを構える建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)」の共同代表・吉田愛氏と谷尻誠氏を招聘した。SUPPOSE DESIGN OFFICEは、2019年2月に東京・渋谷でオープンしたグローバルな視点でデザインされたホテル「hotel koe tokyo(ホテルコエトウキョウ)」をはじめ、作品集の巻頭を飾る外観がひと際目を引くオーストラリアの複合施設「New Acton Nishi」など、国内外で唯一無二の斬新な建築物を生み出している新進気鋭の設計事務所。
その一方で、2017年に渋谷区大山町へ移転した新オフィスの中には、誰もが利用できる「社食堂」を併設している。一般的には外に開かれていないクローズドな「建築事務所」の存在、そこで働くスタッフの働き方にも、一石を投じるユニークな試みとして多方面から注目を集めている。
2人のディレクターは、今展で「Office-Up」と題して、新しいオフィスの在り方を、展示会のトータルプロデュースという形で提案し、“これからの仕事場”を見つめ直す契機となることを企画した。
IFFT/インテリア ライフスタイル リビングの発表会も行われた、渋谷区大山町の東京オフィスで、SUPPOSE DESIGN OFFICEの吉田愛氏に展示会の企画意図、なぜ建築事務所で食堂なのか?働き方と建築設計の関係性などを聞いた。
SUPPOSE DESIGN OFFICEは、吉田氏と谷尻氏がともに広島出身で、市内ではクリエイターを多数輩出している建築/デザインの専門学校で知り合った縁から、2000年に広島で設立したのが始まり。
当時について吉田氏は、「当初は下請けの仕事もしていましたが、特にデザインを求められない仕事のときも、アイデアを盛り込んだ提案をしては、普通の家で良いからと言われ、採用されないこともあった。住宅で最初に依頼が来た知人の家は、大胆な提案もして、完成時には友人の家具屋さんと、家具の展示を兼ねた“オープンハウス”を開き、アパレルショップや家具店など街中にフライヤーを配ったりもした。オープンハウスというと営業色が強すぎる気がするが、家を建てたい人以外のもっと幅広い層、建築と接点の無い人たちに、興味を持ってもらえる状況を作れたらと思った。一般の人が“建築”に少しでも触れてもらうことが大切だと、この頃から心掛けていた」と振り返る。
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