大林組は、高速道路リニューアル工事で工程短縮と耐久性向上を実現する防水機能を持ったプレキャストPC床版を開発した。既に構造検討や性能確認実験、輪荷重走行試験を経て、実橋へ適用するのに十分な防水性能や強度などが確認されている。
大林組は2020年4月、東日本高速道路(NEXCO東日本)と共同で、高速道路リニューアル工事での床版取り替え工事の工程短縮と床版の耐久性向上を目的に、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)とコンクリートの複合構造で、防水性能を有するプレキャストPC床版を開発したことを公表した。
新開発のプレキャストPC床版は、UFCが持つ防水性能を生かした技術を用い、プレキャスト工場でUFCとコンクリートとの複合構造となるプレキャストPC床版を製作し、建設現場へ運搬して設置する。床版接合部にもUFCを使用することで、床版全面をUFCで覆い、床版の防水性を確保している。現場での防水工が不要となるため、高速道路の工事でネックとなる交通規制の日数が減り、工期全体の短縮が期待できる。
また、UFCは、100年劣化しないとされる材料のため、長期にわたって床版の防水性が損なわれない。UFCの厚さは、プレキャストコンクリートの製造及び供用中の荷重作用などで、ひび割れが起こらないように2〜5センチとしている。
さらに防水性を保つため、舗装を浸透した雨水はUFC上で排水される仕組みで、従来の防水工と同様にコンクリート内部への浸透を抑制する。
実物大の床版切り出しモデルを用いた輪荷重走行試験では、設計供用期間の100年を超える使用状況を再現し、防水性能や十分な疲労耐久性、コンクリートとUFCとの一体性が全て確認された。
技術検証では、大林組が開発したUFC「スリムクリート」を採用し、プレキャストPC床版同士の接合部にはスリムクリートを採用した「スリムファスナー」を導入して、床版部と同様の防水性が認められたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.