【第3回】日本のBIM先駆者が定義する「BIMはチェンジマネジメントである」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(3)(4/4 ページ)

» 2020年05月15日 10時00分 公開
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自ら意識を変え改革に乗り出すことがBIMの真価を引き出す

 建設業界は、いまだに印刷された「紙」で仕事をする古い体質が常態化しているため、さまざまな問題を抱えている。また、作る建物はほとんど一品生産で、多くの建材と多くの職人が携わる複雑な仕事だという理屈で、業務のデジタル化を受け入れない考えも多数派だ。建設に携わる多くの人が、このままの仕事が永遠に続くはずはないと思っていながら、変わることができずジレンマに陥っているのが現実であろう。しかし、自ら意識を変え改革に乗り出すことこそが、BIMの真価を引き出すための唯一無二の方法であると確信する。

 当社は、2017年にBIM推進室が立ち上がってから、トップダウンで設計部門でのBIM移行を進め、環境構築や人材育成に着手し、2020年度中に、全物件の設計BIM移行を目標に据えているので、現時点で、設計部門でのチェンジマネジメントは着実に前進している。

BIMへの完全移行が新しい道を拓く

 BIMの本来の目的は、BIMの技術を極めることではなく、BIMを活用することで、生産性を向上させることにある。そのためには、社員の誰かかが使えればよいのではなく、作業にかかわる担当者、派遣社員、協力業者など、関係者全員が変わらなければならい。そうしなければ、いつまでたっても「紙」に印刷された図面で作業をするという状況から抜け出すことはできない。

 関係者全員が変わるということは、容易なことではない。Revitを使って実務で効率的に活用できる仕組みを作り、ワークフローを整えるとともに、ファミリ(部品)などの整備をしなければならない。さらにそれを社員全体が使えるように、教育も徹底的に行う必要がある。そして完全に業務のBIM移行を果たすことで、BIMモデル活用の道は拓けてくるだろう。

 連載第3回では、2013年頃の当社のBIMに対する取り組みを紹介し、その時のBIMコンサルの結果から、現在に至る過程を示した。今後は、過去の工事での事例や2017年から始まった会社全体でのBIM移行について解説してゆく。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年4月1日現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

連載バックナンバー:

BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ

 第1回:日本のBIM先駆者が警鐘を鳴らす「なぜ日本のBIMはダメなのか?」

 第2回:日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」

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