BIM(Building Information Modeling)元年から2018年で11年が経過し、国内でもBIMによる確認申請が一部で始まっている。大和ハウス工業は、社内で構造BIMの作業フローの統一的な基準を定め、構造部門で初の試みとなるBIMによる確認申請を行った。構造BIMで確認申請するためのカギや構造BIMで何が変わるのか、大和ハウス工業の講演から読み解く。
構造システムグループが主催する「建築とITのフォーラム」が2018年10月10日、東京・千代田区のソラシティホールで開催された。
当日のアジェンダから、大和ハウス工業による「BIM導入による構造業務の変革」と題した講演を取り上げる。登壇者は大和ハウス工業 BIM推進部・宮内尊彰氏。
構造計算の歴史を振り返ると、1950年代前半にまずコンピュータによる構造計算が初めて導入された。1974年には一貫構造計算の第1号となる科学技術計算サービスシステム「DEMOS-E(BUILD)」が公開。
その後、1981年の新耐震基準を踏まえ、1984年には構造システム社の一貫構造計算プログラム「BUS-1」、2002年にwindows版の構造計算ソフト「BUS-3」が登場。コンピュータや印刷機の性能アップを背景に、入力や解析結果がこれまでのテキスト形式からグラフィック形式となり、視認性が向上した。2005年に発覚した耐震偽造事件を受けた2007年の建築基準法改正を境に、計算ソフトのブラックボックス明確化や解析モデルの厳格化が求められるようになった。そのため、従来は構造設計者の裁量で判断していたが、以降は建築基準法の解釈が最優先されるようになった。
2015年にリリースされた「BUS-6」では、BIMに対応。構造解析および一貫計算ツールから、構造モデル連携のツールへと様変わりした。この背景には図面と計算書の整合性厳格化の流れから、「適合性判定制度」が見直されことで、メーカーも構造モデル(図面情報)を意識した入力方法へと変わったことがある。
その結果、2018年現在では、解析のための「計算モデル」と、「構造モデル(構造図)」の同一性がより図られ、計算上は必須でない柱・梁(はり)・壁・基礎の配置設定が、計算モデルでも容易に入力できるようになった。今では一貫計算ソフトはBIMの連携ツールとして定着しつつある。
そうした構造BIMを取り巻く環境変化の中で、大和ハウス工業は2006年からCGでの「Autodesk Revit」の活用をスタート。次世代CAD検討委員会、BIM推進委員会、BIM実施委員会を順に設置して、2017年には一気通貫BIMの標準化を行った。
一気通貫BIMは、設計部門が、意匠・構造・設備を3Dモデル上で設計し、監理部分をBIMマネジメントで補うことで、意匠・構造・設備・監理の業務が一気通貫化され、不具合や無駄の解消につながる。設計・施工、鉄骨加工の自社工場も含めた一気通貫の作業環境を整え、全部門でBIMを共有・連携することで、生産性向上と品質確保を図ることを目指している。
一気通貫のためには、効率の良い構造BIMや作業フローを社内で統一させ、構造BIMを部門間でデータ連携できるようにする環境を構築することが求められる。
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