次のプロジェクトでは、意匠・構造・設備の統合モデルを作成した。前回のプロジェクトでは、部分的には配管の干渉チェックを行ったが、実施設計図のレベルの統合モデルが、どのような価値を生むのかを実感してみたかった。
このプロジェクトは、データをベースに、Revitで3次元モデルを構築するいわば「後追いBIM」である。図面を作成することが目的ではないので、短期間で作業が終わると甘く考えていたが、実際には2カ月もの期間がかかってしまった。図面に書かれていない部分の判断や図面の不整合に対する質疑応答など、統合モデルを作るのは、単にモデル作成だけでは済まされない。
統合モデル活用の一番の目的は、設計や工事・工場の関係者を集めて、当社では初となるコーディネーションミーティングを行うことだった。コーディネーションミーティングでは、今まで図面でしか判断できなかった納まりや干渉チェックの検討が可能になるため、結果としてさまざまな意見交換の場となった。工事が始まってからでしか気付かないようなことも話し合えたので、それなりの価値はあった。
しかし、ミーティングに集まった構造、設備、工事や工場の各担当者はRevitを使えず、自分で操作して干渉部分を探すことができなかった。そのため、こちらで用意した問題点をコーディネーションミーティングの参加者が討議する形をとった。これは着工前の事前検討会を3次元モデルで行っているようなもので、それ以降、このモデルが活用されることはなかった。
このように、RevitやNavisworksを使えない担当者を集めても、その場限りの利用で終わって、それ以上の活用には広がらない。そもそも、後追いBIMは図面とモデルが連動しないため、図面を変更するたびにモデルを変更しなければならなくなる。このような状況に作業が追い付かなくなった時点で、モデルは単なる“参考資料”にしかならない。
統合モデルによる納まり確認や干渉チェックの効果が無かったわけではない。だが、統合モデルを作った2カ月近くの労力を考えると、採算が合うものではないと落胆した。
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長谷工ではマンションのライフサイクル全般でBIMモデルを活用し、一気通貫での生産性向上を実現している。しかし、BIMを導入した当初は、膨大な手間が掛かっていたというが、これを解消すべく、Revitとオペレータをつなぐアドオンツール「H-CueB」を独自開発した。長谷工版BIMの要ともいうべき、H-CueBを徹底解剖する。
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