3.11復旧工事など災害対応で活躍したCIM、岩手・地方建コンの奮闘Autodesk University Japan 2019(3/6 ページ)

» 2020年02月26日 06時05分 公開
[湊日和BUILT]

台風の被害状況をドローンで撮影

 近年、日本各地で自然災害における被害が深刻化する中、同社は2016年に大きな被害をもたらした台風10号による河川災害の改良復旧計画を実施した。

 自治体の要請を受け、台風10号被災直後の初動調査の段階から現地に赴きドローンで対象河川の近辺を撮影した。岩手県内の7つの市町村で実施し、撮影したポイントは68カ所に及び、総延長21.5キロにわたって動画や静止画を撮影。動画はドローンで撮ることで、対岸からは分からなかった想定以上の崩落状態が浮き彫りになった。

昭和土木設計がドローンで撮影した地点

 この動画を自治体に提出することで、危険箇所の情報を共有し、緊急車両が走行していた道路を完全通行止めにする際に用いられたという。地元の自治体から情報提供があった被災箇所の他、始点と終点および背後地が分かるような全景写真の取得や河川の流れが把握できる上流側と下流川の静止画も撮影した。

 藤原氏は「災害時、行政は地域住民への対応など、さまざまな緊急業務に追われていたため、職員が現地に赴き、被災箇所を発見するのには限界があった。時間の経過に伴い変化していく現場で、ドローンによる初動調査は目視では確かめられない場所を撮れ、災害の痕跡を詳細に記録できた。復旧のための資料として貢献できると見込んでいる」と語った。

 広大な被災箇所は、画像をつなぎ合わせ1つの画像にまとめ、解析を前提に撮影した時は、画像をベースに3Dモデルで形状を復元し、点群やオルソ画像も生成した。

斜め写真を連結した全景写真

 台風10号の発生後は、測量要員が不足し、現地で作業が進まず設計が滞ることが多々あった。厳しい状況のもと、ドローンで空中写真測量をすることで、広範囲に及ぶ被災箇所も迅速に計測。取得した3Dデータは、住民説明会にも用いた。

 岩手県内の河川災害復旧事業では、多自然川づくりの完成形となる3Dモデルを構築した。橋梁と同様に現況と完成後の3Dモデルを用いて、どう変わるのかを理解できるような動画を製作。ドローンによる計測から動画作成に至るまでを内製化し取り組んだ。

 藤原氏は、「それぞれの川が地域住民の思い入れがあることを踏まえ、設計の意図をうまく伝えられるような動画を作成した」と回想した。

安家川を3Dモデルにより復元
岩泉町・安家川の3Dモデル

 発注者の岩手県は、地権者に対し、2D図面で従来通りに説明を行っていたが、昭和土木設計は完成した動画を住民に視聴してもらうことで将来像をイメージしやすくした。

 藤原氏は、「説明会後、自分の家が計画に関わることを実感した人が、その後の住まいについて相談していた。計画の段階で内容を深く理解してもらい、生活再建に向け、準備を進めてもらえた。3Dモデルの有効性を照明することができたと実感している」と述懐した。

3Dモデルで河川災害復旧計画の完成後のイメージを作成

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