3.11復旧工事など災害対応で活躍したCIM、岩手・地方建コンの奮闘Autodesk University Japan 2019(4/6 ページ)

» 2020年02月26日 06時05分 公開
[湊日和BUILT]

データサイクルを考えたBIM/CIM

 i-Constructionは2017年、リクワイヤメントが設定され、本格的な運用が始まっている。同社は、現時点よりさらに優れたデータサイクルとは何かを考えながらBIM/CIMへの取り組みを推進してきた。会場では、ICT土木工事と土木構造物におけるBIM/CIMの活用事例を解説した。

 藤原氏は、「最初にICT施工で、施工業者が、3D設計データの作成や測量を受注したケースを紹介する。3D設計データの作成は、2D横断図の断面をつなぎ合わせて作るのが一般的だ。だが、この方法だと、地形の変化点を記載した横断図が不足している場合が非常に多く、施工で追加の横断図を作成することも少なくない。加えて、施工側の手間が増える以外にも、設計意図の共有を正確に行うことが難しい」とした。

横断図の加工

 2D横断図を使用したデータ作成の場合、ICT施工用に細かくピッチを調整しても設計者の意図を反映しにくいことも挙げた。こういった課題を解消するために、オートデスクの土木設計ソフト「Civil 3D」を活用した。

 Civil 3Dで線形などの仕様を設定して、3Dモデルを作り上げた。藤原氏は、「BIM/CIMの利用が進むと、近い将来に、直轄工事だけではなく、設計の場面でも、Civil 3Dなどのソフトを用いて、設計者の意図を汲(く)んだ3Dデータの納品がスタンダードになってくるだろう」と示唆した。

Civil 3Dで作成可能な3D設計データ

 Civil 3Dを使った3Dモデルの作成方法についても言及。Civil 3Dのビジュアルプログラミングで、設計思想をフローチャート化した後、それぞれの横断図を自動生成させる。切土と盛土の幅員や法面の変化は自動で制御されるため、ミスが発生しづらい。

 藤原氏は、「設計者がどういう考えで線形を引き、縦断図をプランニングし、横断図を作り上げたのか。それらを言語化しプログラミングすることで、それぞれの図面を作成した」と思い起こす。

 また、「各層の構成を指定しているため、個々に合ったボリュームで算出でき、面も書き出せる。こういった取り組みで、設計者がイメージした横断図を作れる。この横断図は施工面だけでなく、完成形の面も抽出が簡単だ」と続けた。

 Civil 3Dが、施工時に作成することが多い路床(ろしょう)や路体(ろたい)の面も同時に作れるメリットを生かし、これらの3Dモデルは、クラウド上にアップロードし、施工業者と情報共有した。

 この他、起工測量で取得した地形や施工面の3D設計データを構成したモデル、施工後の出来形、完成後を意識した3Dモデルも列挙された。

 藤原氏は、「視認性を高めることだけがBIM/CIMの利用用途ではないが、設計の意図を正確に伝達するために、どう見せたいのか何を見せたいのかを意識してBIM/CIMを使う必要がある」と強調した。

 次に、ポンプ場の工事におけるBIM/CIMの活用事例を解説した。これまで、このポンプ場の施工では、2D図面を見るだけでは、ポンプ場の躯体形状を把握するのが困難だったため、ダンボールで模型を作って関係者が意思疎通をしていた。

ポンプ場の躯体設計での3Dモデルの活用

 藤原氏は、「この工事の担当者が若手の技術者ということもあり、情報共有を円滑にするために、3Dモデルを使いたいという要望があった。2Dモデルから3Dモデルを作成し、完成後のイメージの共有と図面照査を実現した」と語った。

 さらに、「段ボールだと戻せないが、3Dモデルであれば、任意の箇所で何度も断面を切ったり戻したりすることが可能だ。3Dモデルを使い、仮設工の取り合いなども検討できる」と説明。

 3Dモデルの利点について、現場担当者や地域住民が完成イメージを想像することが簡単になり、工事への理解を深められることを挙げた。また、ポンプ場のような施設は地下に埋設されるため、施工から維持管理までの観点でも、3Dモデルは有効だと指摘した。

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