現場TECHは、建設業の見積/契約/請求業務の担当者にDXの実態を聞き取った。その結果、「取引先/現場ごとの運用」などが障壁となり、デジタル化は大手で64%超と進んでいるものの、小規模企業では約21%にとどまった。
現場TECHは、建設業に従事し、見積/契約/請求業務を担当する300人を対象に、「建設業バックオフィスDX実態調査」の第一弾として、見積/契約/請求業務のDXの実態を調査した。
建設業では、業務でデジタルツールの活用が広がる中、見積/契約/請求などのバックオフィス業務では、Excelや紙、各種システムなど複数の手段が利用されている。また、取引先や現場ごとに異なるルールや運用への対応も必要となる。
今回の調査では、見積/契約/請求業務におけるデジタル化の進捗、現在利用されている業務手段、データ連携の状況、DX推進の障壁などを調査。さらに、企業規模による違いや今後のシステム導入や見直し意向について分析し、建設業バックオフィスDXの実態を整理している。
見積/契約/請求業務全体について、現在どの程度デジタル化が進んでいると感じるかの設問では、全体では「ほぼすべてデジタル化(90%以上)」が13.3%、「おおむねデジタル化(70〜80%程度)」が20.3%となり、70%以上デジタル化していると回答した割合は合計33.7%だった。
一方、「半分程度(50%程度)」は20.3%、「一部のみデジタル化(20〜40%程度)」は19.7%、「ほとんど未デジタル(10%未満)」は26.3%となっている。
デジタル化の状況を従業員規模別にみると、企業規模によって回答に大きな違いが判明した。
「70%以上デジタル化」と回答した割合は、小規模企業(1〜49人)では21.4%だったのに対し、大規模企業(300人以上)では64.2%。「ほとんど未デジタル(10%未満)」と回答した割合は、小規模企業では36.3%、大規模企業では4.5%となった。
そのため、従業員規模が大きい企業ほど、見積/契約/請求業務のデジタル化が進んでいる傾向が浮き彫りになった。
見積作成や工事請負契約、受発注、請求書発行などの各業務で、現在主に利用している手段を聞いたところ、見積作成では「Excel/スプレッドシート」が42.3%で最も多く、次いで「建設業向けシステム」が18.7%となった。
工事請負契約/受発注では「Excel/スプレッドシート」が29.7%、請求書発行では34.0%となっており、こうした業務でもExcel/スプレッドシートが一定の割合を占める。
一方、紙/手書きの割合は、見積作成では7.7%、工事請負契約/受発注では11.3%、請求書発行では14.3%だった。
業務によって割合に違いはあるものの、建設業向けシステムや汎用クラウド、Excel/スプレッドシート、紙/手書きなど、複数の手段が使われている実態が明らかになった。
見積/契約/請求に関連する業務で、特に手間や時間がかかっている業務を尋ねると、最も多かったのは、「積算/見積作成」の55.3%。次いで「実行予算の作成/展開」が27.3%、「社内承認/決裁」が16.3%と続いた。また、「特に手間や時間はかかっていない」は17.3%だった。
今後、最もデジタル化や効率化を進めたい業務は何かを質問すると、「積算/見積作成」が37.3%で最多。具体的な業務では、「実行予算の作成/展開」が7.3%となった。一方、「特にデジタル化/効率化を進めたい業務はない」は22.3%だった。
現在負担が大きい業務、今後デジタル化や効率化を進めたい業務の双方で「積算/見積作成」が一番多く、同業務に負担感と効率化ニーズが集まっていることが見て取れる。
見積/契約/請求業務で利用するシステムやデータが、どの程度連携しているかについては、「必要なデータはほぼ自動で連携している」と回答した割合は13.0%にとどまった。
一方、手入力や再入力が一部残る層が25.0%、システム同士が連動していない層が15.7%、紙やExcel中心で「連携以前の状態」とする層が20.3%で、3つを合わせると61.0%となった。
前の設問で、「手入力や再入力が残っている」「システム同士が連動していない」「紙/Excel中心で連携以前の状態」と回答した183人に、データが連携されていないことで最も負担になっていることを聞いた。
最も多かったのは「特に大きな負担は感じていない」の24.0%。具体的な負担としては、「複数システムやExcelへの重複入力/転記」が16.4%、「元請/発注者指定システムや指定様式への入力/書き換え」が14.2%、「手入力/転記による入力ミスや確認/修正」が13.7%と続いた。
その他、「必要なデータ/最新データを探す/確認する」が9.8%、「CSVの加工/取込/編集」が8.2%。負担は、重複入力や指定様式への対応、確認や修正など複数の作業に分散している。
デジタル化を進める上で、最も大きな障壁となっているものは、「取引先の運用に合わせる必要がある(紙/郵送/指定様式/指定システムへの対応など)」が19.3%で最多、「現場/取引先ごとにルールや運用が異なり、標準化できない」が16.7%。2項目を合わせると、36.0%が「取引先/現場ごとの運用」に関する項目を挙げている。
また、「建設業特有の業務/商慣習に対応できるシステムが少ない」は10.7%、「既存システムとの連携やデータ移行が難しい」は9.0%だった。
見積/契約/請求業務のDXでは、自社内のシステム導入だけでなく、取引先や現場ごとに異なる運用への対応も課題となっていることが明確となった。
今後1〜3年以内のシステム導入や見直し意向では、「既に具体的な導入/リプレースを進めている」は11.3%、「具体的に比較/検討している」は12.0%、「関心はあるが時期は未定」は20.7%となり、合計すると44.0%となった。
一方、「当面、導入/見直しの予定はない」は38.3%、「分からない」は17.7%となっている。
デジタル化の進捗別にみると、「既に具体的な導入/リプレースを進めている」「具体的に比較/検討している」「関心はあるが時期は未定」の合計は、「90%以上デジタル化」と回答した層で80.0%となった。また、「70〜80%程度」では62.3%、「50%程度」では42.6%、「20〜40%程度」では39.0%、「10%未満」では16.5%だった。
デジタル化が進んでいると回答した層ほど、さらなるシステム導入や見直しにも前向きな傾向がみられる。
今回の調査では、見積/契約/請求業務のデジタル化状況には、企業規模による違いがあり、従業員規模が大きい企業ほどデジタル化が進んでいる傾向にあることが判明した。また、Excel/スプレッドシートや紙、建設業向けシステムなど、複数の手段が業務ごとに利用されている実態も分かった。
DXを進める上では、システムそのものだけでなく、取引先の運用に合わせる必要、現場や取引先ごとに異なるルールへの対応も課題となっている。見積/契約/請求は社内だけで完結する業務ではなく、取引先や現場を含めた運用全体がデジタル化に影響していることを示唆している。
調査時期:2026年8月3〜4日
調査対象:建設業に従事し、見積/契約/請求業務を担当する方
有効回答数:300件
調査手法:インターネット調査
調査主体:現場TECH(合同会社ソウルグッド)
調査レポート:「施工管理求人数1位は東京、地方は全国企業が下支え」レクリー調査
AI:最大のAIリスクは「従業員のスキルアップ不足」、日本企業の38% Octave調査
産業動向:衛星データ活用から宇宙での建設まで 新会社SPACETWIN-Xに聞く「建設業と宇宙の接点」
建設業の人材動向レポート(64):建設業の人材構造は10年でどう変わった? データで読み解く「高齢化」と「外国人材」【独自分析】
調査レポート:人手不足が追い風に? 上場ゼネコン50社の9割で売上総利益率が改善
調査レポート:ゼネコン積算部門に迫る危機! 「2030年問題」と「隠れ残業」の実態を調査Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10