このうちSYNCVRについては、学生たちはVRゴーグルと連動して揺れる椅子型の地震動再現装置に座り、約100年前に発生した関東大震災のデータを再現した揺れを体験した。
体験では、同じ震度で「耐震構造」と「免震構造」を施工したビルで、揺れ方がどう異なるかも比較。耐震構造は、建物が地面と一緒に揺れるため、上層階では揺れが増幅し、家具の転倒などが起きやすい。免震構造は、免震装置が地震エネルギーを吸収し、揺れを70〜80%低減できる。そのため、建物を重大な損傷から守り、地震後も建物の継続利用が可能だ。
地震が極めて少ないミシガン州から訪れた多くの学生にとって、強い揺れを体験するのは初めての経験となった。VRによる没入感のある体験は、数値データだけでは理解しにくい「恐怖」と、建築技術がもたらす「安心」を直感的に伝えるツールとして有用性を証明していた。
福島氏は、「感覚的な体験が建設コストと安全性のトレードオフに悩むクライアントとの合意形成で、極めて有効に働く」と有用性を強調した。
学生訪問の会場となったのは、日建設計が2023年4月に設立した共創プラットフォームPYNT東京だ。日建設計単独では解決できない複雑な社会課題に対し、業種の壁を越えたパートナーとのオープンイノベーションで、社会実装を目指す場だ。会員となることで誰でも利用でき、建築に限らない多様な分野の研究開発が進められている。
PYNTは、現時点で日建設計の東京ビルと竹橋オフィス、札幌、福岡などに展開されており、近々開設する大阪を加えて5拠点となる予定だ。2026年5月時点での会員数は、813人に達している。
PYNT東京には、プロジェクターの投影で室内デザインを実寸大で確認できる「XR STUDIO」をはじめ、原材料や製品の循環で環境負荷を低減させる「サーキュラーエコノミー」を意識し、キノコの菌糸体(菌糸が集まった皮)を培養して作ったレザーテーブルや竹素材の天井など、多彩なアイデアを採り入れている。
MSUの学生たちは、試作中のプロトタイプを展示し、来場者のアイデアを取り込んで改善を繰り返す「ガレージ」のようなPYNTのコンセプトに強い関心を示した。
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