建設現場の慢性的な人手不足の問題を打開する「フィジカルAI」の実証が始まった。清水建設は、2028年に完成予定の日本一の高さとなる「Torch Tower」でヒューマノイドロボットの現場巡回に加え、技能者の作業を模倣したロボットアームによる塗装作業の検証を始めている。
清水建設は2026年7月8日、国内の建設業界の先陣を切り、AIロボット(フィジカルAI)の現場実装に向けた本格的な実証をスタートさせたと発表した。既にヒューマノイドロボットによる現場巡回やロボットアームによる塗装作業の実用化をターゲットに、本格的な実証を開始している。
フィジカルAIとは、カメラやセンサーを通じて現実世界の状況をリアルタイムで把握し、ロボットや機械システムを適応的に制御するAI技術の総称。その代表格といえるのが、現実世界の変化する環境に適応しながら、物理的な動作によってタスクを遂行する能力を持つAIロボットだ。
これまで建設現場に導入されてきたロボットの多くは、あらかじめプログラムされた動きを反復する「作業ごとの専用機」としての色合いが強かった。しかし、日々環境が目まぐるしく変化する建設現場では、状況に合わせて物理的な動作を自己判断できるAIロボットを実用化できれば、1台で複数の作業を柔軟にこなす「汎用機」としての活躍が見込める。
清水建設は既に具体的な実証へと踏み込んでおり、三菱地所などが進める東京駅前の再開発プロジェクト「Torch Tower(トーチタワー)」の建設現場で、ヒューマノイドロボットを用いた巡回作業を行った。実証では、手にカメラを持ったヒューマノイドが毎秒1.0メートルの速度で自律歩行し、周囲の状況を感知して判断しながら指定したルートを巡回することに成功した。今後は、ロボットが取得した映像をマルチモーダルLLM(大規模言語モデル)を駆使したAI技術で解析し、現場の管理業務を大幅に効率化する仕組みを検討する。
また、並行して、作業者の緻密な動作を模倣学習したロボットアームによる塗装作業の検証も進めている。
ヒューマノイドロボットに代表されるフィジカルAIを実用化するには、単なるハードウェアの導入だけでは不十分。そのため、清水建設は、現場データの収集と分析、シミュレーション、AI学習モデルの構築、そしてロボットへの実装というサイクルを回す「建設業特化型のAIエコシステム」の構築を目指す。その過程でロボットへ移植する技能をモデル化/アーカイブ化する取り組みは、熟練技能者の高齢化が進む日本で、高度な職人技を後世へ伝承する重要な使命も担う。
今後はソニーなど複数企業の技術協力を得て、将来の労働力不足という業界共通の課題解決に向け、建設現場でのロボット化の適用範囲を強力に広げていく方針を打ち出している。
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