民間調査会社によると、国内のスマートホーム市場は2026年に1.8兆円、2030年に2.8兆円規模に拡大すると予測されている。
三菱地所 住宅業務企画部長 鈴木智久氏は、HOMETACT分社化の背景について「スマートホームは日本ではまだ成長途上にある。2026年の市場規模予測は、米国が約8.6兆円規模とされるのに対し、日本は約1.7兆円と約2割にとどまる。さらに、日本のマーケットではロボット掃除機などの家電やスマートスピーカーといった機器販売が約6割を占め、ソフトウェアサービスの存在感はまだ小さいのが実情だ」と指摘した。
一方で、「HOMETACTは複数メーカーの機器を1つのアプリで操作できるというオープンプラットフォームを提供する点に独自性がある。使用中の家電や備え付けの機器類を買い替えることなくスマート化できる手軽さから、導入のハードルが低いと自負している」と述べ、「分社化によりリソースを集中投下し、意思決定のスピードを高めることで、事業の成長を加速させる」と説明した。
三菱地所グループは引き続きリソース提供やプロモーション、セールスなどでHOMETACTHOMETACTの普及を支援。三菱地所ブランドでは、三菱地所レジデンスのマンションや三菱地所ホームの注文住宅への実装を計画している。
HOMETACT 共同代表CEO(最高経営責任者) 松本太一氏は、分社化の狙いとして、専門人材の確保、意思決定の迅速化、外部アライアンスの強化の3点を挙げた。「スマートホーム事業では、営業、カスタマーサクセス、システム領域などの側面で専門的かつ深い知見を有する人材の確保が求められる。新会社では約20人規模でスタートするが、今後も専門人材を採用していくことでより強固な事業基盤を構築する」と説明。
新会社ではCEOとCOO(最高執行責任者)の共同代表制を採用し、コーポレート機能立ち上げと事業推進を分担することで、事業の成長スピードを落とさない体制を整えた。
今後、外部企業とアライアンスも積極的に推進する。松本氏は「三菱地所の100%出資会社としてスタートするが、事業を飛躍的に成長させていく上で、外部企業とのアライアンスや資本業務提携など複数の選択肢を検討する。アライアンスに関する意思決定を速やかに行うためにも分社化が必要だった」と強調。分社化後も、三菱地所の住宅事業グループと連携を取りつつ、次のアクションを積極的に進めていくと語った。
HOMETACTの提供価値について、共同代表COO 橘嘉宏氏は、サービスの提供を通じて資産価値を向上させる点にあると語る。「HOMETACTを、企業の垣根を超えて家電や機器をつなぐことで暮らしやすさを高める『住み心地DX』インフラと位置付けている。物件のソフトとハードを両面で更新し続けることで、不動産の経年劣化を『経年進化』に変える」との考え方を示した。
橘氏は「不動産業界の常識では、築年数が経過するたびに物件の価値が下がっていくとされていた。この常識を、テクノロジーの力で転換できると確信している。従来は劣化による価値の低下を抑え、リフォームなどを行って賃料を維持するという『守り』の施策が中心だった。HOMETACTが目指すのは『攻め』の体験投資だ。入居者の体験を向上させることで物件の価値が上がるというアップサイクルを実現させる」と語った。
HOMETACTの導入に当たっては、三菱地所グループのノウハウを活用し、デバイスの選定から設計、導入までを伴走で支援。365日対応の有人コールセンターを用意し、管理会社の入居者対応の負担を軽減する。また、国際標準規格「Matter」の策定団体Connectivity Standards Alliance(CSA)へも加盟しており、Matter認証済み機器との相互接続を進めていくことで、より自由度の高いスマートホームの構築を目指す。
橘氏は「HOMETACTは不動産価値と居住体験、運用効率を同時に高める三方良しのスマートホームだ。居住者の満足度を起点として、建てる人には資産価値の強さを、住む人には心地よさを、管理する人には運用のしやすさを確実に実践できるサービスにしていく」と決意を述べた。
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