複数現場を兼任する技術者にとって、移動時間は生産性を左右する大きな課題だ。住友電設は遠隔管理ツールと現場向けWi-Fiを組み合わせ、現場へ赴かずに状況確認や指示を行う実証を進めている。
建設現場における管理/検査業務では、技術者の移動負担が生産性を左右する課題となっている。複数現場を兼任する技術者は現場間の移動に多くの時間を費やし、管理範囲が広い大型現場では現場内を巡回するだけでも時間を要する。遠方の現場では、確認作業そのものより移動時間の方が長くなるケースも珍しくない。
技術者の移動負担の課題に対し、大手サブコンの住友電設が検証を進めているのが現場管理や検査の遠隔化だ。クアンドが提供する建設現場向け遠隔支援コミュニケーションツール「SynQ Remote(シンクリモート)」と、古野電気の建設現場向けWi-Fiシステム「ゼンゲンバLAN」を組み合わせた現場実証の取り組みを、「JECA FAIR 2026 〜第74回電設工業展〜」(会期:2026年5月27〜29日、東京ビッグサイト)で紹介した。
電気設備工事は、建物の基礎工事段階から竣工直前の試運転/通電まで、建設プロセス全体にわたって携わる。複数現場を長期間管理する技術者にとって、移動負担の軽減は業務効率に直結する。
住友電設 東部本部 施工統括部 主席 佐藤雄一氏は「電気設備工事は新築工事において、ゼネコンに次いで、建物に関わる期間が長い業種だ。移動負担は長年の課題で、現場へ赴かずに状況を把握できる仕組みを検討してきた」と語る。
住友電設は2024年末から遠隔管理ツールの検証を開始し、当初は汎用的なWeb会議ツールも試した。しかし、現場の映像を共有しながら具体的な指示を出す上では限界があると判断。2025年2月から、SynQ Remoteの試験導入を開始した。
SynQ Remoteは、スマートフォンを介して現場と遠隔地を接続するツールだ。事務所のPCや手元のスマートフォンから現場のリアルタイム映像を確認し、状況の把握や指示出しを行える。映像上にポインターを表示する機能や、画面上に直接書き込めるお絵描き機能により、認識のずれを抑えながら情報共有できる。
QRコードやURLでアクセスできるため、アカウント登録やアプリのダウンロードをする必要なく、協力会社や発注者とも手軽につながれる。
特に効果を実感しているのが、会話内容の文字起こし機能だ。佐藤氏は「従来の電話連絡や口頭指示では、後から指示内容を確認することが難しかった。SynQ Remoteは通話中のやりとりが自動的に文字で記録できる。指示内容や判断の経緯を残せるため簡単に振り返ることができる」と評価する。
遠隔管理導入に当たってネックになるのが通信環境だ。新築工事の現場では通信環境が整備されていないケースもあり、地下階や建物内部などモバイル通信が不安定なエリアが存在する。そこで、SynQ Remoteと組み合わせて導入しているのがゼンゲンバLANだ。
ゼンゲンバLANは複雑な配線工事を必要とせず、工事の進捗に合わせた増設や盛替えも容易なメッシュWi-Fiシステム。全天候型アンテナを採用しており、親機となるアクセスポイントをインターネット回線に接続すれば、子機は電源供給のみで無線接続が可能だ。電波が届きにくい現場環境でも、安定した通信環境を確保できる。
佐藤氏は「遠隔確認を基本とし、本当に必要な場合だけ現場へ移動することで時間を有効活用できる。これまでに約10現場で検証を実施しており、工事完了に伴い利用を終えた現場もあるが、利用した技術者からは継続利用を望む声も挙がっている」と話す。
利用者からは移動時間の削減に加え、「確認したい箇所を動画で質問でき、電話で聞くよりも分かりやすかった」「複数工事が重なる日でも移動せずに状況確認や指示ができ便利」などの評価が寄せられている。
佐藤氏は「SynQ Remoteには会話内容を文字起こしし、要約する機能がある。現場への指示や安全上の注意事項が『何について、どのような指示をしたか』という形で整理されるため、その内容をそのままKY(危険予知活動)にも活用できるのではないかと期待している」と今後は安全管理への展開も視野に入れる。
今後も試行を継続しながら適用現場を拡大するとともに、新たな活用方法も検証していく考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10