山岳トンネルの掘削作業は基本的に1〜1.5メートルごとに、削孔、装薬、発破、ずり出し、コソク(整形)、コンクリート吹付(1次)、鋼製支保工建込、コンクリート吹付(2次)、ロックボルト打設の一連の作業のサイクルをたどります。そのため、1サイクルあたりの作業時間=サイクルタイムを管理することが生産性向上には欠かせません。そこで、画像から施工機械を検知し、画像と音声から作業内容を判定するAIが検討されています※8。
大規模な施工現場では、付替え道路工事の進捗に合わせて橋梁(きょうりょう)も施工するなど、ある工事の進捗に他の工事が影響を受けることがありますが、大規模な現場内で施工進捗のデータ共有は必ずしも容易ではありません。文献9では、一元的な管理を実現するために、3次元点群データで進捗や差分を可視化することを試みています。
i-Construction 2.0の施工のオートメーション化に基づき、建機の自動化も進化しています。自動ブルドーザーが大型ダンプトラックで荷下ろしされた材料をまき出す作業を実施する際には、荷下ろし材料の形状や体積を把握することが課題となります。自動ブルドーザーに設置されたセンサーから材料の形状や体積を計測した場合、材料の量が多く山のような形状になっているため、下図のように自動ブルドーザーから見て材料の後背部が測定できません。そこで文献10では、下図のようにAIを2段階で利用して材料の形状や体積を推定しています。
また、建設には限られた画像などの情報から3次元モデルを再構成するニーズが多いため、3次元コンピュータグラフィックスの先進的な技術を取り入れたさまざまな検討も始まっています※11。
※11 「LERFを用いた3次元空間の復元と損傷検出」野津秀太,河原達哉,大屋誠/AI・データサイエンス論文集5巻3号p95-102/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年
建設現場の生産性向上には、画像や点群などのセンシング技術の発展とともに、現場のデータを効率的かつ効果的に利用するためのAIがますます重要となっています。そのため、今後はAIの発展こそが、i-Construction 2.0の実現を近づけるのではないでしょうか。
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