i-Con2.0実現にはAI活用が不可欠 3つのオートメーション化を加速するAI【土木×AI第37回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(37)(2/2 ページ)

» 2025年12月25日 10時00分 公開
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山岳トンネルや大規模現場での現場管理にAIを活用

 山岳トンネルの掘削作業は基本的に1〜1.5メートルごとに、削孔、装薬、発破、ずり出し、コソク(整形)、コンクリート吹付(1次)、鋼製支保工建込、コンクリート吹付(2次)、ロックボルト打設の一連の作業のサイクルをたどります。そのため、1サイクルあたりの作業時間=サイクルタイムを管理することが生産性向上には欠かせません。そこで、画像から施工機械を検知し、画像と音声から作業内容を判定するAIが検討されています※8

トンネル掘削サイクルを算出するAIシステムの例 トンネル掘削サイクルを算出するAIシステムの例 ※8

※8 「AIによるトンネル掘削サイクルの自動算出手法における学習量に関する考察」菅早苗,山中哲志,松本慶太/AI・データサイエンス論文集6巻2号p128-137/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

 大規模な施工現場では、付替え道路工事の進捗に合わせて橋梁(きょうりょう)も施工するなど、ある工事の進捗に他の工事が影響を受けることがありますが、大規模な現場内で施工進捗のデータ共有は必ずしも容易ではありません。文献9では、一元的な管理を実現するために、3次元点群データで進捗や差分を可視化することを試みています。

3次元点群データを用いた進捗管理 3次元点群データを用いた進捗管理 ※9

※9 「大規模施工現場における3次元データを用いた進捗の可視化と一元管理」窪田諭,早川翔,山口愛加,安室喜弘/AI・データサイエンス論文集4巻3号p786-793/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年

建機自動化など施工のオートメーション化にAIを活用

 i-Construction 2.0の施工のオートメーション化に基づき、建機の自動化も進化しています。自動ブルドーザーが大型ダンプトラックで荷下ろしされた材料をまき出す作業を実施する際には、荷下ろし材料の形状や体積を把握することが課題となります。自動ブルドーザーに設置されたセンサーから材料の形状や体積を計測した場合、材料の量が多く山のような形状になっているため、下図のように自動ブルドーザーから見て材料の後背部が測定できません。そこで文献10では、下図のようにAIを2段階で利用して材料の形状や体積を推定しています。

材料を荷下ろしした際の材料とダンプトラック/ブルドーザーの位置関係 材料を荷下ろしした際の材料とダンプトラック/ブルドーザーの位置関係 ※10

※10 「深層学習を用いたダンプトラック荷下ろし材料の形状・体積推定手法に関する研究」田島大輔,石津諒太,黒沼出,浜本研一,内村裕/AI・データサイエンス論文集6巻2号p199-211/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

材料の形状や体積を推定するAI 材料の形状や体積を推定するAI ※10

 また、建設には限られた画像などの情報から3次元モデルを再構成するニーズが多いため、3次元コンピュータグラフィックスの先進的な技術を取り入れたさまざまな検討も始まっています※11

※11 「LERFを用いた3次元空間の復元と損傷検出」野津秀太,河原達哉,大屋誠/AI・データサイエンス論文集5巻3号p95-102/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

 建設現場の生産性向上には、画像や点群などのセンシング技術の発展とともに、現場のデータを効率的かつ効果的に利用するためのAIがますます重要となっています。そのため、今後はAIの発展こそが、i-Construction 2.0の実現を近づけるのではないでしょうか。

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会 構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長を務めた後、現在はAI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長。インフラメンテナンス国民会議 実行委員も兼任。

近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)。

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