鉄骨製作工場で製造できる従来比10倍寿命の制振ダンパーを開発、竹中工務店とNIMS制震

竹中工務店とNIMSは、高層建築を長周期かつ長時間の地震から守る「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を共同開発した。製造時に特殊設備が不要で、一般的な鉄骨製作工場で製作できる。東京都中央区で建設中の長瀬産業東京本社ビルに初適用した。

» 2025年12月19日 09時00分 公開
[BUILT]

 竹中工務店と物質・材料研究機構(NIMS)は2025年12月3日、高層建築を長周期かつ長時間の地震から守る「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を共同開発したと発表した。2026年の竣工を目指し、建設を進める東京都中央区の長瀬産業東京本社ビルに初適用した。

一般的な鋼材ダンパーと比べ、約7〜10倍の疲労寿命

「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」の構成図 「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」の構成図 出典:竹中工務店プレスリリース

 ダンパーは、FMS合金製のH形断面芯材を補剛鋼管で覆った簡素な構成で、製造時に特殊設備が不要なため、一般的な鉄骨製作工場で製作できる。

「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を取り付けた様子 「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を取り付けた様子 出典:竹中工務店プレスリリース

 FMS合金は、Fe(鉄)を主成分として高濃度のMn(マンガン)やSi(ケイ素)などを添加した疲労耐久性に優れる鉄系形状記憶/高耐疲労合金。指定建築材料として2022年に国土交通大臣認定を取得している。

 鉄を主成分とするFe-Mn-Si系FMS合金の疲労耐久性を活用することで、従来型と同レベルのエネルギー吸収性能を維持した。FMS合金芯材は変形時のひずみを分散し、疲労き裂の進展を抑える特性を有する。通常の鋼材ダンパーと比べ、約7〜10倍の疲労寿命を有する。

 竹中工務店は芯材や補剛鋼管の最適設計と構造性能評価を担当し、疲労試験で良好な変形性能を確認した。NIMSは専用溶接材料を用いた溶接条件を設定し、FMS合金の耐疲労性を引き出している。

 長瀬産業東京本社ビルはS/RC/SRC造地下2階/地上14階建て(高さ62.95メートル)で、延べ床面積は2万6218.86平方メートル。設計・施工は竹中工務店で、高さ約63メートルの制振構造の中に新型ダンパー18基を配置した(粘性ダンパーと併用)。執務空間を妨げない設置スペースを確保しながら、地震後の事業継続を重視した制振計画を構築している。

長瀬産業東京本社ビル 長瀬産業東京本社ビル 出典:竹中工務店プレスリリース

 両者はこれまでも、FMS合金を用いた制振ダンパーとして、2019年に平板形の芯材をモルタルと鋼管で補剛した「平鋼断面ブレース型」を、2023年にはエネルギー吸収性能を約2倍に向上させた「十字断面ブレース型」を開発している。

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